海陽町沖に、地震が発生せず津波を引き起こした可能性のある海底地滑りの大規模な痕跡があることが、徳島大大学院の馬場俊孝教授(津波防災学)の調査で分かった。馬場教授によると、痕跡は南海トラフ沿いに無数にあるが、大陸に近い地点で大規模なものが見つかるのは珍しい。県内にも「前兆なき津波」のリスクがあることを示している。

 痕跡があるのは海陽町の南東約20キロ沖合の水深600~800メートル地点。幅6キロの斜面の4カ所で200~300メートル崩落している。いずれも発生時期は分かっていない。原因も不明だが、周辺が揺れて崩れた可能性が高いという。

 馬場教授は神戸大と連携し2017年夏、学術研究船を使った調査を開始。船底に設置した発信器で音波調査を3回行い、海底の地形や崩落範囲などを特定した。今後は崩落した土砂を採集したり、崩落箇所の地質を調べたりして発生時期や原因の解明を目指す。

 海底地滑りによる津波は、海底斜面上の堆積物が急激に滑り落ちた際に海水が上下に動いて引き起こされる。地震による津波と違って被害は局所的だが、地震波を観測しないため、前兆を把握するのが難しい。

 馬場教授によると、崩落が起きた場合、県南部沿岸には高さ10メートルほどの津波が10分程度で到達する恐れがある。昨年12月22日にはインドネシアで火山噴火に伴う海底地滑りが原因とされる津波が発生し、多数の死傷者が出た。

 過去の南海地震を記録した古文書「震潮記」によると、県内では1512年に海陽町宍喰地区周辺で地震がないまま津波が発生し、3700人余りが亡くなったとの記録があるが、海底地滑りとの因果関係は不明だ。

 馬場教授は「県南部には国の観測網があるものの、海底地滑りによる津波は予測が難しく、小さな地震がきっかけで地滑りが発生する恐れもある。津波警報が出た場合、少なくとも解除されるまでは警戒してほしい」と話している。