ベートーベンの第九交響曲アジア初演100周年を記念したミュージカル「よろこびのうた」の制作発表記者会見が27日に、東京都内で開かれた。脚本の羽原大介さん、演出の錦織一清さん、音楽の岸田敏志さん、主演の四宮貴久さんと帆風成海さんらが出席し、来年1月27日からの公演に向けて意気込みを語った。

羽原大介さん「異国人同士のラブストーリーの集大成に」

脚本を担当した羽原大介さんは、坊っちゃん劇場の越智陽一社長と知り合い、参加の機会を探っていたがスケジュールが合わず、今回ようやく参加が実現したという。劇場では四国、瀬戸内にあった話を基にした作品を上演していて、徳島県の板東俘虜収容所で、ドイツ人捕虜が日本で初めて第九を歌ったという史実を聞き「そんな話があるのか」と驚きを隠せなかった。「その話のときはぜひやらせて下さいと立候補させていただいていた」と熱望していたことを明かし、「念願かなって今回初めて参加させていただくことになった」と喜びを語った。

在日朝鮮人と日本人高校生のロマンスを描いた「パッチギ!」、広島の老舗酒蔵にイギリス人女性が嫁いでくるという「マッサン」に続き、外国人と日本人のラブストーリーはこれで3本目という。今作の「よろこびのうた」は、約100年前のドイツ人捕虜収容所のドイツ人の青年と、徳島のお遍路さんの老舗旅館の一人娘の恋を軸にしている。「私の異国人同士のラブストーリーの集大成のつもり」と作品に傾けた情熱を表し、「あとは、信頼する演出家の錦織さんと、音楽家で歌唱指導していただく岸田敏志さん、出演者の皆さんにバトンをお渡しして初日を待つばかりとわくわくしている」と上演を心待ちにしていた。。

音楽担当・岸田敏志さん「劇場からの帰り道に口ずさんでくれるような音楽を」

ミュージカルの音楽作りへの取り組み方について、長年自分が歌うために作ってきていたが「最近は(僕ではなく)ほかの方が演じられる。そんな歌を作ることによって、普段自分が思ってもみない音楽作りができている。非常に楽しくなっている時期」と紹介。音楽作りへの心掛けとしては「演者の人たちが一曲一曲を自分の持ち歌としてカラオケで歌いたいと感じられるような、観劇した人が帰り道にどれかのフレーズを鼻歌ででも口ずさみながら帰っていただけるように作らせてもらっている」と話した。

今作については、初稿の台本を手にしたときから「これは絶対に面白い、すばらしい話になるなと思いました」と印象を述べる一方、誰もに知られている喜びの歌「第九」をテーマとした作品の音楽作りに「曲が大きすぎて、本当にどういう風に音楽をやっていけばいいのかっていうのは非常に悩ましいところだった」と壮大なテーマへの悩みも明かした。

ドイツの俘虜収容所の人たちと住民のふれあいをどうやって音楽で表現するかを考えながら音楽作りしたといい、「楽しいものになれば」と願った。

演出 錦織一清さん

昨年に今作の話があり、羽原さんからも脚本をもらい「本当に俺でいいのか、すごい大役が舞い込んできたな」という気持ちだったと振り返った。

ミュージカルについて「アメリカでは、ミュージカル・コメディと、コメディが付いていた時代があり、それが始まり」と話し、今回の作品は第一次世界大戦という重いテーマがバックグラウンドにありつつも「俘虜収容所のドイツ軍の方と、徳島の方の和気あいあいとする、面白おかしくすてきな作品にする努力を一生懸命していきたい」と意気込みを示した。

四国は、瀬戸大橋開通時のイベントや少年隊での全国ツアーで訪れたことがあるが、近年は「四国を留守にしてしまった嫌いがある」と言う。今回の作品は自ら出演するわけではないが「(上演される)1年間、作った『思い』があるということが、四国の皆さんにもファンの皆さんにも恩返しになるかなと思う」。劇場へは、足を運びたい考えのようで「様子を見に行くことを口実に、四国のほうにもちょこちょこ遊びに行けたらいいなと思う」と話した。

坊っちゃん劇場で徳島を舞台にした公演は今回が初めて。「責任重大」と感じつつ、「どこまで貢献できるかわからないが、一生懸命やりたい」と力を込める。徳島県鳴門市で、アジア初演を知ったときの印象については、高校の音楽の授業で「喜びの歌」を習ったことに触れ「ドイツ語で習ったが、かなり忘れている」とし、「このカンパニー(一座)がボーカル指導の方に教わっているのがうらやましい。僕もあのとき、もうちょっとまじめにやっておけば良かった」と振り返った。「劇場に遊びに来たときは、歌のシーンぐらいは一緒に出させていただいていいんじゃないか。これから(第九)を覚えて、もしそうなったら、出演者が(13人から)14人になっているかもしれません」とサプライズ出演の可能性も示唆した。

大阪で仕事をする機会が多く、何度か徳島の方へ行ったことがあるとし、「愛之助さん(片岡愛之助さん)がシスティーナ歌舞伎をやられていると思うんですけども、それを拝見しに行ったこともある」という。徳島らしさの演出については「(第九が演奏された)当時とは、変わっているんでしょうけど、ものすごくきれいな海の色とか、きれいなところだと思う」と印象を語り、「羽原さんの台本からのせりふに、僕なりに思ったことを少し足し算させていただいて、セットはなかなか制限がありますので、セットは無いけれども、お客さんの頭の中で徳島の景色が浮かぶような、そんな情緒感でお芝居が作れたらな」と。明子がすだちの花を手にしたシーンなどを盛り込んでいきたい考えも示した。

主演の四宮貴久さん(左)と帆風成海さん