昨年末の紅白歌合戦で流れたあの曲が、頭から離れない。深夜のテレビの前でぼうぜんとした。圧倒された。本県出身の米津玄師さんが歌う「Lemon」。強烈だった

 音楽配信の記録を軒並み塗り替えた2018年を代表する曲である。何を今更と、後ろ指をさされても構わないので評したい。大塚国際美術館での幽玄な演出もさることながら、何より歌詞にうなった

 <胸に残り離れない/苦いレモンの匂い/雨が降り止むまでは帰れない/切り分けた果実の片方の様に/今でもあなたはわたしの光>。大切な人を失った悲しみを歌ったという。なのに、包み込まれるようなやすらぎを感じる。詩的で、深い

 3年前の秋、米歌手ボブ・ディランさんのノーベル文学賞受賞が論争を呼んだ。音楽分野も文学として認めるのか。難解な問いであり、答えは出そうもない。でも、米津さんの詞への見方は一致するはず。むろん「文学」で

 紅白出演は徳島での中継を条件に受諾した。19日からは初の全国アリーナツアーに臨む。出発点は徳島。郷土愛がうれしい。古里の好感度は赤丸急上昇である

 徳島市のアスティとくしまで2日間、計1万人が「米津文学」を堪能する。筆者をはじめ会場に行けない残念な人は多かろう。せめて会場に向けて気持ちを送りたい。「お帰り」「ありがとう」と。