厚生労働省の重要な統計調査を巡り、信じ難い事実が次々と明らかになっている。

 政府の経済指標や失業給付などさまざまな分野に使われる「毎月勤労統計調査」を、長年にわたってルールに反した手法で作成し、総務省から統計法違反の疑いが指摘されているのだ。

 勤労統計は、国の「基幹統計」であり、正確・公正でなければならないことは言うまでもない。国民の信頼を裏切り、政府統計への不信感を生じさせた厚労省の罪は重い。

 早期の全容解明はもとより、関係者の責任も厳しく問われなければならない。

 毎月勤労統計調査は、従業員500人以上の事業所全てで調査することになっているが、2004年から東京都内に限り3分の1程度しか調べていなかった。

 同省内では、03年に「大規模事業所は全数調査ではなく、抽出調査でも良い」などとした「事務取扱要領」を作成していたという。

 統計法は、調査対象などに変更がある場合、所管する総務省に申請しなければならないと規定しているが、報告していなかった。

 さらに悪質なのは、15年以降にその内容の記述を削除していたことだ。ルール違反を認識し、問題が表面化しないよう隠蔽した可能性がある。

 重要な変更を非公表のまま内々で処理し続け、綿々と虚偽の説明をしていた。重大な背信行為と言えよう。

 統計データのゆがみは、単に数値の誤りにとどまらず、国民生活もむしばんでいる。

 調査対象の大規模事業所が少なくなった影響で平均給与額が下がり、延べ約2千万人に雇用保険や労災保険などで過少支給となった。

 支給漏れは計537億5千万円に上る。事業主に払う不足額を合わせると少なくとも567億円が必要となり、政府は19年度予算案を組み替えて対応する。影響は計り知れない。

 厚労省は事実関係を解明するため、外部有識者らによる「特別監察委員会」を設置した。誰が、なぜ調査を変更したのか、「要領」は誰が作成し、どう引き継がれてきたのか、組織的な隠蔽はなかったのか。国民が納得できる徹底した調査を望みたい。

 全ての対象者の特定や追加給付の開始なども急がれる。時間が掛かれば所在の特定も難しくなり、不利益を被る人も出てこよう。

 それにしても、厚労省は失態が多い。12年前の「消えた年金問題」をはじめ、昨年の通常国会では労働時間調査の不適切データ問題が発覚。障害者雇用率の調査でも不適切な計上をチェックできていなかった。

 国民や社会と真摯に向き合う姿勢が欠けていると断じざるを得ない。

 今回の問題で、同省の信頼回復の道は険しくなった。職員一人一人がそのことを十分に自覚し、誠実に対処していくしかあるまい。