四国八十八カ所霊場7番札所・十楽寺と8番札所・熊谷寺を結ぶ阿波市土成町吉田の遍路道沿いに、故三木武夫元首相(1907~88年)の実家がある。三木家が解体を進めていたが、市民から惜しむ声があり「住民の意見を聞きたい」として中断している。
木造平屋建ての住居と納屋が並び、大きなカイヅカイブキとウバメガシが目印。ただ実家を示す看板や表札は無く、知らずに通り過ぎる人も多いだろう。
私の自宅は近くにあるため、幼い頃から前をよく通った。ここ10年は誰も住んでおらず、傷みが目立っていた。台風の後などは門が傾くなど、老朽化が著しかった。
三木家は解体後、跡地を阿波市に寄贈し、市が公園に整備する計画だ。三木家と市は22日に、今後の予定を協議する。
三木元首相は、37年に衆議院議員に初当選し、74年から76年までは県人で初めて首相を務めた。亡くなったのは昭和最後の年。遠い過去になりつつある中、平成が終わる時代の節目にクローズアップされるのは巡り合わせだろうか。時が止まった建物が「昭和の記憶」を呼び起こさせてくれる。