<贈られしひまはりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に>。平成最後となる「歌会始の儀」で、天皇陛下が披露された歌である。宮内庁によると、4月末に退位される陛下と、皇后さまの出席は、これが最後となり、今後この儀式に歌を寄せる機会はない見通しだ

 最後の歌会始に、陛下は阪神大震災を詠んだ。題材となったヒマワリは2005年の震災10周年追悼式典の際、遺族代表の少女から贈られ、皇居で毎年育てている。成長を見守る両陛下の温かな表情が、目に浮かぶよう

 「はるかのひまわり」と言う。震災から半年後、亡くなった神戸市の加藤はるかさん=当時(11)=の自宅跡に花を咲かせた。鎮魂と復興の象徴となり、その種を植える運動が広がった

 平成の31年。災害多き時代だった。空前の巨大津波が、命と生活を奪った東日本大震災。伴う原発事故は東北の山河に深い傷を残し、影響は今も続く

 さらに豪雨や火山の噴火も各地で起きた。戦争という人災には直接巻き込まれなかったものの、自然を封じ込められると高をくくった人間を戒めるような、想定外の天災が相次いだ

 <光てふ名を持つ男の人生を千年のちの生徒に語る>(歌会始、秋山美恵子さん)。はるかという名の少女の人生も千年のちに伝えなければ。この平成も語り継ぐべきことの多い時代である。