英国の欧州連合(EU)からの離脱の行方が、混沌(こんとん)としてきた。

 英国下院がEUとの離脱合意案を、賛成202票、反対432票の圧倒的大差で否決した。与党保守党の離脱強硬派が大量に造反して反対に回ったほか、「合意案ではEUの経済枠組みに残れない」と懸念する野党も反対した。

 3月29日の離脱期日に向けて、「合意なき離脱」が現実味を帯びている。

 EUとの具体的な取り決めなしに離脱すれば、英国の経済や社会が大混乱に陥るのは必至だ。英国、EUにとどまらず、世界経済の波乱要因になりかねない。当然、日本経済への悪影響も避けられないだろう。

 メイ首相は21日までに今後の対応方針を示す方針だが、事態収拾に向け、離脱の延期も視野に与野党で打開策を探るべきである。

 下院は、最大野党労働党のコービン党首が提出したメイ内閣に対する不信任決議案は、反対325票、賛成306票で否決した。

 保守党の離脱強硬派議員らも、不信任決議案の採決ではメイ氏を支持した。

 ただ、メイ氏が置かれた厳しい状況に変わりはない。

 離脱合意案には、英領北アイルランドに対する配慮から、英国が離脱した後もEUの関税圏に実質的に残留する選択肢が盛り込まれている。離脱強硬派は「英国の主権が取り戻せない」と強く反発している。

 メイ氏は「私の任務は離脱という国民投票結果の実現」と強調し、EU離脱を最重要課題としてきた。しかし、与党内でさえ割れている現在の状況で、幅広い支持を集める案を短期間でまとめるのは困難だとの見方が強い。

 離脱強硬派らは「英国は世界有数の大国であり、EUとの合意は必要ない」というが、果たしてそうだろうか。

 このまま離脱期日を迎えれば、英国とEU間の貿易や金融サービスなど、さまざまな分野で混乱が予想される。

 英仏海峡の両岸で、税関検査待ちの貨物トラックが長蛇の列をつくれば、物流に与える影響は計り知れない。

 コービン氏ら議会の過半数は「合意なき離脱」には反対している。メイ氏はこれを重く受け止めてもらいたい。

 英国の要求に応じて、離脱を延期する場合には、全EU加盟国の合意が必要になる。EUとしても、域内に混乱をもたらす英国の不自然な形での離脱を、座視すべきではない。柔軟な対応が望まれる。

 英国がEU離脱を決めた2016年の国民投票は、離脱が51・9%、残留が48・1%だった。ところが、最新の世論調査では、EU残留への支持が46%で、離脱支持の39%を上回った。

 残留派は国民投票の再投票を求めており、議会でも勢いを増している。

 再投票も含め、あらゆる選択肢を排除せず、英国の未来のために熟議してほしい。