名曲「カントリー・ロード」。歌い出しを聞くだけで、懐かしい気分になる。深夜放送のラジオから流れた時、高校生だった。舞台は米国。登場する見知らぬ自然や人々の暮らしを思い描いた

 「自分がいるべき場所は、あの故郷の街なんだ」と明るく歌い上げる。気持ちに揺らぎはなく、軽快なメロディーが心地よかった。それから20年以上を経て、スタジオジブリの映画「耳をすませば」の主題歌になった

 日本語の訳詞は「ひとりぼっち恐れずに生きようと夢見てた」。心を決め、故郷を離れた若者の応援歌に変わった。「帰りたい帰れないさよなら」。手招きする故郷への道や懐かしい景色に、あえて背を向けた

 米津玄師さんは「この歌詞が好きだった」と、ジブリの鈴木敏夫さんが明かす(15日付本紙芸能欄)。自宅に招いた時、訳詞を担当した鈴木さんの娘さんと「対談」のように語り合った

 周りはただ聞き入り「不思議な、妙に甘美な時間が流れた」。なぜ、この歌詞に魅せられたのか。故郷徳島へと続く、心の中のカントリーロードは、何をささやいていたのだろう

 米津さんに共感し、押し上げたのは、インターネットでつながる無数の若者だ。深夜ラジオ世代の感傷かもしれないが、人をつなぐ仕掛けは変わっても、共感の奥にあるのは、一人一人の「孤独」ではないか。