日立製作所が英国での原発新設計画を凍結した。事実上の撤退である。

 東京電力福島第1原発事故以降、国内で新増設が困難な中、原発メーカーが海外に収益機会を求め、政府も取り組みを後押ししてきたが、今回の凍結により日本の原発輸出は総崩れとなった。

 巨額の安全対策費用が重荷となる一方、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは普及に伴って発電コストが急落している。経済合理性を踏まえれば、原発メーカーが輸出で活路を開いていくのは難しい。

 安倍晋三首相は、原発輸出を成長戦略の柱に据え、各国でトップセールスを重ねてきたが、早急な戦略の見直しが必要である。

 日立が進めてきた英原発の事業費は、安全対策強化により、当初予定の1・5倍の3兆円規模に増大した。

 だが、他の民間企業の出資協力や英政府の支援拡大も見込めず、将来にわたって日立だけで事業リスクを背負い続けるのは極めて厳しくなった。凍結に至ったのは当然だろう。

 トルコで原発新設計画を進めていた三菱重工業も費用が5兆円に膨らみ、断念する方向である。

 このほか、日本勢が受注したリトアニアで計画が凍結され、ベトナムでも経済合理性などを理由に計画が撤回された。東芝は経営危機で海外の原発事業から撤退している。

 米国やフランスも安全性と経済合理性を両立できず、世界の原発商戦では苦戦を強いられているという。

 問題なのは、そうした中で政府が原発輸出に固執していることだ。世耕弘成経済産業相は、原発輸出を支援することについて「方針に変更はない」と説明し、引き続き成長戦略の一環として推進していく姿勢を示している。「安全性」をセールスポイントにするという。

 しかし、原発の優位性が薄れ、海外での原発事業で採算性を確保していくのが困難と分かった今、戦略を改めるべきである。

 大切なのは、原子力政策をしっかりと見直していくことだ。原発への依存度をいかに低くし、再生可能エネルギーの拡大をどう図っていくのか、議論を進めていかなければならない。

 使用済み核燃料を再処理し活用する核燃料サイクル政策や、高レベル放射性廃棄物の最終処分などについても、今なお解決の道筋は見えていない。原発の再稼働も、政府や産業界の思った通りには進んでいない状況だ。

 ただ、原発に関する人材育成や技術継承はおろそかにしてはならない。福島原発事故の収束や国内外の原発での廃炉作業などに必要となるからである。

 世界的に脱原発の流れは強まっている。人材と技術へのニーズは高まろう。政府も、メーカーと一体となって取り組んでもらいたい。