厚生労働省の毎月勤労統計を巡る不正調査問題は、前代未聞の統計不祥事である。政府や行政は原因を究明し、国民の信頼回復に努めなければならない。

 ところが、弁護士や統計の専門家らで構成する同省の特別監察委員会が公表した調査報告書では、複数の職員が不正を認識していたとしながら組織的な関与や隠蔽を認めなかった。他の多くの疑問も残ったままで、内部調査の甘さや限界を露呈した形だ。

 さらに、きのう開かれた衆参両院の厚労委員会の閉会中審査で根本匠厚労相は、報告書のたたき台を同省職員が作成したと明らかにした。

 報告書の信ぴょう性も揺らいでおり、真相解明はほど遠いと言わざるを得ない。

 問題の発端は、全数調査すべき東京都分の大規模事業所を2004年から抽出調査に変更したことだ。

 報告書などによると、03年7月の都道府県向け通知で、マニュアル「事務取扱要領」にそのことを記載、歴代の担当部長が決裁していた。しかし、15年調査向けの要領からは抽出調査を容認する記述を削除したという。

 調査計画の変更には総務相への申請が必要だが、いずれも手続きを怠り、外部にも公表しなかった。

 また、17年冬ごろには、局長級の政策統括官が担当者から違法調査の報告を受けていたことも判明。「しかるべき手続きで修正すべきだ」と指示したものの、その後の処理は部下に委ね、対応を放置していた。

 一部の担当職員が不正を認識しながら誰も声を上げず、漫然と前例踏襲を続けていた実態や、重要な統計が軽視されてきた状況が浮き彫りになった。監察委が「信じ難い事態で、言語道断だ」と厳しく非難したのもうなずける。

 ただ、報告書は監察委の初会合から5日しかたっていないせいか、切り込み不足も目立つ。職員のたたき台に影響されていたとすれば、由々しき問題である。

 閉会中審査では、監察委による職員へのヒアリングでも新たな事実が判明した。職員31人を聴取したうち、課長補佐級以下11人は外部有識者が同席せず、内部職員だけで行っていたという。

 検証の中立性を大きく損ねるもので、「お手盛り」との批判が出るのも当然である。

 監察委は今後、再発防止策などに比重を置き検討を進めるとしているが、再調査を行い報告書を出し直すべきだ。

 根本氏は報告書の公表に合わせ、歴代の同省幹部22人を処分した。拙速な報告書提出や処分の発表には、早期に事態を沈静化させようとの政治的な思惑も見える。

 表面的な調査で終われば、信頼回復はもとより、再発防止や組織の立て直しも図れない。現状での幕引きは断じて容認できない。週明けに始まる通常国会では、関係者も招致し、徹底的に審議してもらいたい。