積雪は平年で2・5メートル、最も多かった1945年には4メートルを超したという。十日町市博物館の展示は「雪とのたたかい」から始まる。北国新潟でも、特に雪深い魚沼地方にある

 除雪も十分ではなかった当時、屋根に落ちてけがをする人がいた。屋根に落ちる、とは不思議だが、道に雪が積もり、家並みよりも高い所を人が歩いていたのである。<雪国は簡明である吹雪く夜に帰る場なくば死ぬということ>森澤真理。たじろぐような表現も北国なればこそ

 雪が気まぐれな使者でしかない四国の人間にとっては、その苦労も楽しみも想像の外にある。けれども、この雪との暮らしが、信濃川中流域に独特の文化を育んだのである

 博物館の目玉は、炎のような造形が特徴的な国宝、火焔(かえん)型土器。渦やS字に浮き立つ文様が美しい。煮炊きの跡もあるといい、祭祀(さいし)用とは限らないようだ

 作られたのは5千年ほど前、縄文時代の一時期。木の実を集め、鳥や獣を狩り、魚を取って生活していたころ。暖かく過ごしやすかった、と思われがちだが、雪の量は、今とさほど変わらなかった

 この時季、周囲は銀世界だったはずだ。竪穴住居の中、揺らめく炎の周りに家族が身を寄せている。光と熱。燃え立つような土器の造形を思い立ったのは、そんな時か。逆境が人を創造的にしたのかもしれない。