米国内の混乱と分断を象徴する事態である。大統領が年に一度、議会に対し国家の現状と施政方針を報告する一般教書演説が、延期される可能性が高まっている。

 原因は、メキシコ国境の壁の建設費を巡るトランプ大統領と下院で多数派を占める民主党との対立だ。

 当初は29日に予定されていたが、予算が成立せず、一部政府機関の閉鎖が続いていたため、民主党の下院議長が開催を拒否、閉鎖が解除されるまで先送りになった。

 任期4年の折り返し点を迎え、3年目に入ったトランプ氏は出足からつまずいた格好だ。演説は、国内外の注目を集めるだけに誤算だろう。

 ただ、双方の対立によって最も被害を受けたのは国民だ。政府閉鎖で職員約80万人に給料が支給されなかったほか、国民生活や企業活動への影響も広がっていた。

 強い批判もあってトランプ氏と議会は25日、2月15日までの支出を手当てする暫定予算案に合意した。これにより、1カ月余に及ぶ政府閉鎖はいったん解消されたが、予算案は壁の建設費を含んでおらず、3週間後に再び混乱する可能性があるという。

 予断を許さない状況は今後も続く。演説の開催も決まっていない。トランプ氏と議会は、事態の収拾へ最善を尽くすべきだ。

 2016年の大統領選を巡るトランプ陣営のロシア疑惑も深刻だ。捜査は大詰めを迎えており、報告内容によっては、民主党が弾劾訴追に向けた動きを本格化させるとみられる。議会対応を誤れば、トランプ氏はさらに窮地に陥ることになろう。

 トランプ氏の最大の狙いは20年の再選だ。内政面で苦境に立たされていることから、国際関係に活路を見いだそうとするのではないか。

 危惧されるのは、外交成果に固執し、「米国第一主義」を強めることだ。

 昨年は初の米朝首脳会談にこぎ着け、貿易戦争が拡大する中国には強硬姿勢を通した。独断専行のトランプ流が功を奏したものもあるが、多くの弊害も指摘されている。

 貿易摩擦により世界経済の失速懸念が強まっている。国際秩序や協調体制を軽視し、同盟国との亀裂も生んでいる。国際社会の分断を招いた責任は大きい。

 来月末には、米朝首脳による2度目の会談が予定されている。非核化の進め方を巡り、事務協議は膠着(こうちゃく)状態が続いており、打開の兆しがあるのなら歓迎できよう。

 しかし、主張に隔たりがある中で会談すれば、トランプ氏が具体的な進展を得られないまま、北朝鮮に譲歩する懸念が拭えない。拉致問題も抱える日本は米国に対し、くぎを刺しておく必要がある。

 トランプ氏がこれまでの政治手法を変える可能性はないだろう。それでも日本を含む国際社会は、内向きの政策では活路を開けないことを粘り強く訴え続けるしかない。