徳島県美波町出身の映画監督明石(あかいし)知幸さん(60)=東京都=が古里を舞台に製作予定の映画「ポンコツ」(仮称)で、妻天野真弓さん(59)がプロデューサーを務める。天野さんは、若手映画監督の登竜門「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のスタッフとして、現代の日本映画の中核を担う監督たちを世に送り出した。数々の話題作もプロデュースし、その手腕が明石監督の新作でも生かされそうだ。

「地方に残って暮らす選択肢を映画で提示したい」と話す天野さん=徳島新聞社

天野さんは1992年からPFFの事務局スタッフに参加し、99年以降、PFF出身者を支援する「スカラシップ制度」のプロデューサーを担当。これまで「川の底からこんにちは」(石井裕也監督)や「彼らが本気で編むときは、」(荻上直子監督)など、「キネマ旬報」ベストテンに名を連ねる名作をプロデュースしてきた。

「夫がどうしても撮りたい映画」という今作で、初めて明石監督作品のプロデューサーを務める。映画は、美波町にサテライトオフィスを開設するIT会社の社長の奮闘を通して、「地方創生の今」を描く。美波町に毎年1回は夫婦で訪れるという天野さんは「東京で生まれ育った私にとって、美波町はゆったりとした時間が流れる豊かな場所」と言う。

ただ、県南部では過疎・高齢化でどんどん人口が減少し、地方が疲弊していく現状も目の当たりにしている。

「結局、地方に就職先がないので都会から離れられない人も多い。美波町のIT会社で働く物語を面白い映画として発信できれば、都会の閉塞(へいそく)感から抜け出す一つの選択肢を提示できると思う」

今作の自身の役割を「夫の一番近くにいる応援団」と称する天野さん。現在、夫婦二人三脚で、製作に向けた資金集めに取り組んでいる。

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