1960、70年代に人気を博した西田佐知子さんが歌う「東京ブルース」に、ぞくっとくる一節がある。<どうせあたしをだますなら/死ぬまでだましてほしかった>。うそをついても構わない、でも最期まで分からないように―とは、何と激しい情念

 とはいえ、うそが何十、何百にも膨らめば、さすがに怒り一本へと転じよう。こちらは桁が違う。就任からの2年間、トランプ米大統領が並べた「うそ」は8158回に及んだ。主要紙ワシントン・ポストの調べである

 公約としたメキシコ国境の壁建設では「犯罪と薬物流入が半分になるとの説も」とぶちまけた。調査結果は案の定「裏付けはない」

 昨秋の中間選挙では、投票前日だけで139回に上ったというから驚く。一つもなかったのは2年間で82日。ほとんどは趣味のゴルフに興じた日だったとか。機嫌が良く、打数までは偽らなかったらしい

 もとよりワシントン・ポストを敵対視するトランプ氏である。得意の「フェイク(偽)ニュースだ」と、ののしるに違いない。これも勘定されそうだ

 懐メロをもう一つ。中条きよしさんの「うそ」に登場する<あなた>は、こんなふうに歌われた。哀しいうそのつける人、冷たいうそのつける人、そして、優しいうその上手い人。たぶん「フェイクだ」と激高する人柄ではなさそうだ。