入所者に笑顔で話し掛ける介護福祉士の櫻井さん=石井町のグループホーム濃姫

 「よく眠れましたか」。徳島県石井町石井のグループホーム濃姫で、介護福祉士櫻井祥子さん(26)=同町石井=が、入所する高齢者一人一人に対し、にこやかに話し掛けていた。とにかく笑顔が絶えない。常日頃から心掛けていると言い、「こちらが硬い表情だと入所者は不安になる。笑うと笑い返してくれるんですよ」。また笑顔を見せた。

 高校卒業後は別の職場で事務職として働いていた。介護職を目指す転機となったのは、高齢者との触れ合いだった。

 石井中学校を卒業後、徳島商業高校へ進学。在学中は事務系の仕事を目指し、簿記検定1級や情報処理検定1級といった資格を取った。就職は、経営理念や新規開所でゼロからスタートする環境にひかれ、徳島市内の老人ホームを受験して採用された。

 偶然ともいえる、この勤務先が人生を変えた。事務職であっても、時々買い物に付き添うなど高齢者と接した。「頑張っとうで」と励ましてもらうと、うれしかった。一方、「お風呂に入れてくれんで」などと頼まれるものの、専門の知識や技術がなく、もどかしさが募った。

 「今の事務職は本当に自分がしたい仕事とは違うのではないか」と疑問を持ち始め、一つの思いが芽生える。「お年寄りの役に立ちたい」

 3カ月ほど悩んだ末、踏ん切りをつける。「もやもやしたまま続けても後悔するかもしれない。辞めるなら若いうちがいい」。1年間勤めて退職し、徳島市の徳島健祥会福祉専門学校(現専門学校健祥会学園)に入学した。

 グループホームの入所者18人は全員が認知症。専門学校で対応を学んでいたが、戸惑いの連続だった。性格は異なり、同じことを繰り返し言われたり、「家に帰る」と唐突に怒り出したりされる。「このまま続けられるだろうか」。悩む日々が続いた。

 不安を和らげてくれたのが、先輩職員の存在だ。助言を受けて経験を重ねると、徐々に対応できるようになった。例えばトイレに行くことを拒んでいたら、「ちょっと歩きましょう」と散歩に誘い、トイレまで連れて行く。入所者や家族から感謝される機会も増えた。

 今年は、介護内容を決める介護支援専門員(ケアマネジャー)の試験を受ける。受験に必要な5年間の現場経験が終わるため、ステップアップを目指す。

 介護職の人手不足は深刻化している。徳島労働局によると、昨年11月の介護関連の県内有効求人倍率は3・37倍に上る。特に若い担い手の育成が大きな課題だ。「家族よりも長い時間を一緒に過ごし、人の人生にこれほど関わる仕事はない。もっと同世代の人たちに入ってきてほしい」と呼び掛ける。

 意思表示が難しい認知症の人たちが相手だけに、「望んでいる生活ができているのか」と自問自答する毎日。「介護に正解はない。介護にベストはない」。この思いを胸に、高齢者に寄り添い続ける。