夏の徳島大会準決勝で敗れた富岡西=昨年7月、鳴門オロナミンC球場

 春夏を通じて初の甲子園出場が決まった25日、グラウンドで選手たちに胴上げされる小川監督の脳裏には幾つかの試合が浮かんだ。それらの試合は指揮官同様、選手たちの胸にも刻まれている。

 2017年秋、現チームのエース浮橋は1年生ながら背番号「1」を付けて県大会を戦った。勝てば四国大会出場が決まる準決勝。近年、徳島の高校野球をリードする鳴門戦を前に、チームの士気は高かった。しかし、中盤以降に鳴門打線につかまり、0―7で八回コールド負けした。

 翌日の鳴門渦潮との3位決定戦は、1点を先制しながら追加点が取れない苦しい展開が続き、九回に3点を奪われ、逆転負けした。「大敗した準決勝の重い雰囲気を引きずったまま臨んでしまった」と小川監督。四国大会まであと一歩に迫りながら届かず、浮橋は「勝負どころで点を取られ、先輩たちと四国大会に行けなかった」と苦い経験を忘れていない。

 もう一つの試合は、昨夏の全国選手権徳島大会の準決勝だ。17年秋と昨春に続く県大会制覇を狙う鳴門と顔を合わせた。富岡西は七回に逆転し、八回にも加点。その裏も無得点に抑え、決勝進出へあとアウト三つと王者を追い詰めた。だが、またも最終盤に悪夢が待っていた。一挙5点の反撃を許し、10―11でサヨナラ負けを喫した。

 この試合には現チームの主力も出場していた。先発した浮橋は「もう少し踏ん張れていれば」と振り返る。「1番・右翼」に名を連ねていた坂本主将も「甲子園が近くに見えていただけに悔しかった」と話す。

 試合後、学校に戻った1、2年生は、自主的にそれぞれの課題克服に取り組んだ。大会途中から先発出場した左翼手の山﨑は「もうこんな悔しい負け方はしたくない」と守備力強化へ個人ノックを志願。誰もがまさかの、そして大きな敗戦のショックを振り払おうと練習に打ち込んだ。

 ベンチ入りしていなかったメンバーも「次は自分たちの番だ」とばかりに白球を追った。一塁手の前川は「何としても勝ちたい。チームに貢献するために小技や守備力を磨く」と泥にまみれた。

 新チームの始動前、「絶対に甲子園に行く。そのためにも秋の大会で結果を出す」と誓い合った選手たち。決して忘れることのない敗戦が、夢の舞台へ突き進む力となっていった。