厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査問題は収束するどころか、拡大の一途だ。

 同省の特別監察委員会が公表した調査報告書は検証が不十分として、再調査に追い込まれたが、その後も不信を抱かせる行為が次々と明らかになり、全面的にやり直す事態に発展している。

 28日に開会した通常国会の施政方針演説で、安倍晋三首相はこの問題について陳謝し、雇用保険や労災保険などの過少支給による不足分の支払いを急ぐなどとした。

 行政府への不信感が高まっている。安倍首相は早期に収拾を図り、信頼回復に努めなければならない。

 先の衆参両院の閉会中審査で、課長補佐以下の聞き取りを厚労省職員が実施していたことが分かり、議員から報告書の客観性や信頼性を疑問視する声が相次いだ。

 ところが、不適切な調査はそれだけにとどまらず、課長や局長級の幹部職員への聴取でも厚労審議官や官房長ら省幹部が同席していたという。

 厚労審議官は事務方のナンバー2で、厚労分野の重要施策を統括する。官房長はナンバー3で、職員の人事や不祥事、予算の編成など組織面での業務を所管する立場だ。

 聴取に同席すれば、職員が省に都合の悪い発言を控えることは十分に想定できる。事実解明に逆行する思慮を欠いた行為と言わざるを得ない。

 聴取方法も、メールだけの職員や時間がわずか15分間だけだったケースもあった。にもかかわらず、監察委は「組織的な隠蔽は認められない」と結論付けていた。

 政府や行政に忖度するような調査は断じて許されない。監察委は、不正の動機や背景も徹底的に検証し、今度こそ疑念の残らない報告書にしてもらいたい。

 関係者の責任問題も終わっていない。既に歴代の同省幹部ら22人が処分されているが、監察委の設置や検証に関わった根本匠厚労相をはじめ、幹部職員もけじめをつけるべきだ。

 過少給付の不足分について、首相はできるだけ速やかに対応する考えを示した。しかし、過去に受給して住所の分からない人が延べ1千万人以上いるとされ、追跡には時間を要する。どう処理するのか、実効性が問われる。

 厚労省の不正調査を受け、各府省庁が56の基幹統計を点検した結果、7省の23統計で不適切処理事案が見つかった。うち大半の統計で、計画通りに集計・公表しないなど統計法違反の可能性がある事案が確認されたという。

 政策立案の基礎となる重要統計で、ずさんな対応が横行していた証左だ。日本の統計全体の信頼が揺らぐ事態であり、政府は重く受け止めなければならない。

 首相は施政方針演説で、具体的な再発防止策や、統計業務を担う職員の不足など構造的な問題には触れなかった。後ろ向きでは国民の理解は得られまい。