家庭で暮らせない中学卒業生や児童養護施設の退所者らが自立を目指して共同生活を送る「自立援助ホーム」が2月1日、徳島県内で初めて藍住町徳命に開設される。精神保健福祉士の阿部光宏さん(55)が自宅敷地内に整備した。ホーム退所後の相談支援にも力を入れることにしており、阿部さんは「いつでも帰れる実家のような場にして多くの子どもの自立を見守っていきたい」と意気込む。徳島は全国に5県しかない“空白県”だった。
虐待や貧困、ネグレクト(育児放棄)などにより家庭で生活できない子どもは、高校を卒業するなどして児童養護施設を退所すると同時に自立を求められる。住居の確保など、生活上の悩みを抱えても公的支援を十分に受けられず、大学の中退や職場の退職につながるケースもあった。
自立援助ホームは児童福祉法に位置付けられ、就労している場合は20歳まで、進学している場合は22歳まで入所でき、退所後も悩み相談に応じるなど支援を続ける。
阿部さんが開設するのは、女性専用の自立援助ホーム「ゆめ」で定員は6人。木造平屋116平方メートルで、2人部屋3室、リビングキッチン、浴室、事務室などを備える。建設費は約2200万円で4分の3は国や県の補助金を活用した。
阿部さんは知的障害者施設や児童発達支援センターなどで長年にわたり障害者福祉に携わる一方で、14年からは妻と共に里親として女児2人の養育も担ってきた。香川県の援助ホーム視察を機に、地元でも18歳以上の青少年を見守る場を設けようと決意。17年4月にホーム運営を担うNPO法人はばたきを発足させた。病院や障害者福祉施設で働いていたスタッフ2人を合わせた計3人で運営する。
全国自立援助ホーム協議会(東京)によると、徳島、青森、石川、福井、佐賀の5県にはホームがなく、県こども未来応援室は「養護施設退所後の円滑な自立に向け、選択肢が広がることは喜ばしい。今後は男性を対象とした施設の整備も促進していきたい」としている。