2月25日の徳島ヴォルティス開幕戦。初めて自分でチケットを購入してゴール裏でおひとりさま観戦したリポート、いよいよ試合が始まります。
記者室にいる同僚記者とウェブ速報やツイッター更新の打ち合わせ(という名のレクチャーを受ける)をしていたので、ホーム自由席の入場口に到着したのはキックオフ15分前。入場口では瓶や缶が入っていないかバッグの中の確認を受けた後、ゴール裏へ向かいます。
テレビで見るサッカーは、広いピッチの中を人が走っているイメージですが、実際にスタジアムに行ってみると、思っていたよりもすぐ近くに見えてびっくり。選手たちがボールを追いかけると迫力があるんだろうなとワクワクします。
ゴールが正面に見える中央部の前方は、ユニフォームやヴォルティスグッズを身につけた熱心なサポーターがすでに臨戦態勢を整えていました。
熱のこもった応援についていけるかな?とちょっと不安になりながら、バックスタンド寄りの後方に座りました。近くには親子連れやカップルがいます。グッズを身につけていない普段着の人も多くいたので、同じように初観戦だったのでしょうか。
試合が始まるのを待っていると、ユニフォーム姿のサポーターがフラッグを配りに来てくれました。事前取材で見ていたものの、スタジアムで手にするフラッグは応援の気持ちを高めてくれますね。初心者サポーターも一員に認めてもらえたようで心強いです。
ピッチを挟んで向こう側からは岡山サポーターの声援が聞こえてきます。なぜか「負けてはいられない」という気持ちがわいてくる。試合前から戦いが始まっているようです。
選手紹介の後、スクリーンには、徳島ヴォルティスを長年応援し続け、急逝した徳島出身の俳優・大杉漣さんの写真とメッセージが映し出されました。そこには「人生のなかで好きなものと出会う サッカーもそのひとつです そんなステキな一喜一憂を全身で味わうつもりです!!」とありました。
スタジアム前に設けられた記帳所には人が絶えず、ゴール裏には「漣さんと共に」というメッセージを掲げる人も。漣さんを追悼するため、キックオフ前に黙祷の時間が設けられました。両チームの選手も観客も全員が静まり返って頭を垂れる姿に、漣さんがどれだけサッカーを愛し、サポーター仲間や選手たちに愛されていたかを感じます。
いよいよキックオフ。ちょうど試合が始まったころ、ついにぽつぽつと雨が降り始めました。
でも大丈夫。先輩サポーターさんたち直伝の雨対策、レインコートと荷物を入れるゴミ袋のおかげで観戦に集中できます。寒さ対策も、あったかインナーとふわふわネックウォーマーでばっちりです。
ただ、サッカーのルールもよく分かっていないサポーター見習いは、配られたフラッグの使いどころが分からない…。戸惑ってきょろきょろしていると、中央前方の熱心なサポーターエリアが気になりました。
ヴォルティスが攻めているときとそうじゃないときは応援の歌も変えている?? 試合展開を見きわめながらチャントを変え、跳び続ける様子に引き込まれ、視線はピッチとゴール裏中央前方を行ったり来たり。
まごまごしているうちに試合はどんどん進んでいきます。あれ??ひょっとして攻め込まれているのかな?と思っているうちに先制を許してしまいました。
サポーター見習いがぼやぼやしているうちに前半が終了。まだ後半があるし、後半こそはもっとちゃんと応援しよう。そう考えていると、熱心なサポーターエリアから選手たちを叱咤するような声が聞こえてきてびっくりしました。何だかこわい!?
ハーフタイムに同僚記者に聞いてみると「久しぶりにブーイングを聞いた」と。「昨シーズンのプレーと比べると低調だったので、もっと頑張れっていう感じかな」とも言っていました。
なるほど。ずっとヴォルティスを応援し続けてきた人たちは「こんなものじゃない。もっとできる」ということが分かっているから、選手を鼓舞する意味でもブーイングするのか。でも、初めて観戦するサポーター見習いには戸惑うばかり。昨年のプレーを知らないから比較するものがないし、何を見ても新鮮で楽しいんです。近くにいた子どもたちはこわがってなかったかな、とちょっと心配になりつつも、後半に備えて再入場口へ。
今度はチャントの声がもっと聞こえるように、応援の一体感が味わえるように、中央近くの最後部に場所を変え、応援の準備はばっちりです。
後半は、前半とは全く違う展開に。ずっとヴォルティスがボールを持ち続け、何度もシュート。「あーっ!!(行け!)」とか「あぁ…(惜しい)」とか、周りの観客と一緒に思わず声を上げたり、聞こえてくるチャントに合わせて手拍子をしたり、ドキドキハラハラ。
終盤、選手交代で藤原志龍選手が登場するとひときわ大きくなる声援。期待の高校生プレーヤー(と昨年から同僚が取材していました)の躍動する姿に思わず必死で応援しました。
得点することができないまま試合は終了してしまいました。ですが、サポーターたちはすぐに帰宅準備をするのではなく、ゴール裏近くまで歩いてきた選手らに拍手を送る姿が印象に残りました。
漣さんのメッセージにあった「ステキな一喜一憂を全身で味わう」、1試合の中でもたくさんの一喜一憂があることを少しだけ実感できた気がします。試合結果は残念だったけど、たくさんの人と一喜一憂を分かち合う楽しさがスタジアムで観戦する魅力なのかもしれない。
初観戦記念にヴォルタくんのぬいぐるみを購入し、会社に戻りました。
開幕戦を取材した記者たちと試合を振り返りました(サポーター見習いは聞いているだけ)。
「42分の1が終わっただけ」「42キロのうちの1キロ。まだまだこれからだから」と話す同僚と先輩の明るい言葉にほっとしつつ、「あ、全部で42試合なんだ」とつぶやいて、同僚たちを凍り付かせてしまいました。
次回観戦までにはもう少しサッカーとヴォルティスのことを勉強しておかなければ。