阿波人形浄瑠璃の勝浦座が所有する人形の衣装展が3月21日まで徳島市の阿波十郎兵衛屋敷で開かれている。勝浦座は、江戸時代に発足した徳島でもっとも古い人形座の一つ。きらびやかな衣装の数々を楽しむことができる。
展示会場の十郎兵衛屋敷の母屋で、赤い打ち掛けを着た姫の人形が座る。
中央に展示されている黒と赤の生地に金糸の竜が刺繍された豪華な着物は、人形遣い勘緑さんによると、「素襖(すおう)で神事や踊りに使ったものだろう」。
床の間側の下段には、武家の娘や姫の役柄に用いる打ち掛けが並ぶ。未婚女性が着る打ち掛けは袖が長く、既婚女性用のものは袖が短い。上に羽織るように着用するので人形を遣うための穴が開いていない。
障子側の下段には、打ち掛けの中に着る小袖。小袖の背中部分には人形遣いが手を入れるための穴が開いている。
障子側の上段には、武士が出陣の際に着る陣羽織を展示。
床の間側の上段・中段に掛けられているのは、男性用の衣装で、古いものでは明治39年の年号が入ったものもある。裏地に神社ののぼりを再利用したものもあり、神社と人形芝居のつながりが伺える。
会場構成・生け花は新田陛嘉さん(草月流)が手掛け、竹を多用した趣のある演出が目を引く。
阿波十郎兵衛屋敷の佐藤憲治事業課長は「展示されている衣装はいずれも時代物の演目で用いられるものばかりで、かつて徳島では時代物が盛んに上演されていたことが分かる。歴史のある貴重な衣装を楽しんで」と話している。
勝浦座特別公演「摂州合邦辻 合邦内の段」では、衣装展中央で座っている人形が舞台に登場する。
勝浦座特別公演(阿波十郎兵衛屋敷)
1:「傾城阿波の鳴門 十郎兵衛内の段」
3月11日午前11時35分~、午後2時35分~
2:「摂州合邦辻 合邦内の段」
3月21日午後2時45分~
入場料は、一般410円、高校・大学生300円、小中学生200円。
問い合わせは阿波十郎兵衛屋敷〈電088(665)2202〉。