何を今さらというご批判があることは百も承知で書く。徳島市が徳島駅西側に計画している新ホールについて、構想案に関する報道を見るたびに「本当にこの場所でいいのか」という気持ちにさせられる。
駅に近い交通アクセスの良さが最大の売りだというが、県都のホールをこんな狭い場所に押し込めてどうする、という思いがずっと消えない。いったんできれば50年、60年と使い続ける施設である。何よりホールはその街の顔にもなる。
市から公表された新ホールの建設費は約87億円だという。これに用地購入費や補償費などが上乗せされると、優に100億円は超えてくるだろう。余っている市有地はたくさんあるというのに、こんな中途半端な広さの場所にこれだけの額をかけなくても・・・というのが率直な感想だ。
ではどうするか。駅北側の市立体育館と県立中央武道館を大和町2の東工業高跡(現在はイオンモール徳島に駐車場として貸与中)に移転させ、両館の跡地に新ホールを造ればどうか。徳島中央公園からのアプローチ、助任川に面したロケーションはホールの立地として申し分ない。十分な広さがある上、駅にも近い。
市教委は新たな体育館の整備計画を2019年度までに作るという。それならなおさら、体育館の新築移転も真剣に検討してもいいのではないか。
現在の体育館と武道館が立つ場所は国有地で、市と県が無償で借りている。ホールを造るなら引き続き国から無償で借り受け、県も武道館の移転に協力すればいい。たとえ市立のホールであっても、県民共有の財産を造るという意識で協調することはできるはずだ。
財政負担は一時的に膨れるが、中途半端な施設を造って後世に禍根を残すことだけは避けたい。市民が愛着を持ち、末永く誇れるような「シビックプライド」となるホールを期待している。(編集委員)