最後のカフェに集まった住民と談笑する上坂さん(右から4人目)=鳴門市鳴門町高島

最後のカフェに集まった住民と談笑する上坂さん(右から4人目)=鳴門市鳴門町高島

 鳴門市鳴門町高島のケアマネジャー上坂敏子さん(65)が2012年から自宅兼事務所を開放し、お年寄りの交流拠点にしていた「コミュニティーカフェ・風の家」が閉じることになった。25日、最後のカフェが開かれ、慣れ親しんできた地域の利用者は、スタッフが心を込めて振る舞う手料理の味をかみしめた。

 カフェは12年7月、上坂さんが代表理事を務める一般社団法人「風の家」の事業としてオープン。会員制で当初は月2回、2年ほど前からは月1回営業してきた。地域の高齢者を中心に、これまで延べ約2500人が利用した。

 上坂さんと知人のボランティアが振る舞う手料理は、さまざまな食材を使い、品数も豊富。地域住民からのデザートの差し入れもあって好評だった。

 この日はお年寄りら26人が訪れ、上坂さんらスタッフ4人が腕によりをかけた「讃岐の白みそ仕立てあん餅雑煮」「アップルパイと焼き芋と鹿児島阿久根のぼんたん」など5種類(600円)を味わった。近くに住む梶村和夫さん(87)紀代子さん(77)夫妻は「ご飯がとてもおいしかった。楽しい場をつくってもらえました」と感慨深げだった。

 上坂さんは12年2月、ケアマネジャーとして働きながら抱いていた「お年寄りが地域でご飯やおしゃべりを楽しみながら暮らせる拠点をつくりたい」との思いを形にしようと法人を設立し、活動を始めた。

 カフェでは鳴門教育大生によるピアノやサックスの演奏なども行われ、若者と交流する場でもあったが、今月に入って上坂さんの家庭の事情で、やむなく休止することになった。

 上坂さんは「料理のメニューを考え、仕込むのは大変だったが、みなさんの笑顔が励みになった」と振り返り「自分も楽しめたので達成感はある。落ち着いたらまた再開したい」と決意を語った。