名前や住所どころか、どこで何を買い、どんなビデオを借りたか。知らない間に、さまざまな個人情報がポイントカードの利用を通じて捜査当局に流れている。そんな実態が明らかになった。

 警察や検察は裁判所の令状を取らずに情報提供を求め、カードを展開する会社は会員規約で提供について明記していなかった。

 顧客情報の入手は犯罪捜査に役立つ半面、行き過ぎれば私生活が丸裸にされる監視社会になってしまう。乱用を防ぐ厳格なルールが必要だ。

 情報提供が分かったのは、ポイントカード最大手「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京、CCC)である。約6700万人の会員がおり、DVDレンタルや書籍販売、コンビニ、携帯電話、ドラッグストア、飲食店など提携先は多業種にわたる。

 内部資料や関係者によると、当局は内部手続きの「捜査関係事項照会」を使い、会員の基本情報のほか、商品を買って得たポイント履歴や、どの店をどのような頻度で利用するかなど、膨大な情報を得ているという。

 捜査現場では、こうした情報は事件解決に不可欠とされているようだ。「足取りを詳細に確認でき、冤罪防止にもなる」と話す検事もいる。

 だが、そうだとしても、事項照会は当局が独自に企業側に出す要請にすぎないものだ。捜査に必要かどうか外部のチェックは働かず、取得後の使用方法なども不明で、漏えいリスクもつきまとう。

 刑事訴訟法に規定された手法とはいえ、本人の許可を得ず、包括的に情報を取得、活用するのは、令状主義を定めた憲法に反する疑いがある。

 行動履歴のほか、書籍、レンタルビデオなどの履歴が分かれば、思想信条や趣味嗜好を把握することもできる。これが捜査目的以外に使われないとは言い切れまい。憲法が保障する人権の侵害につながる恐れは拭えない。

 CCCは、以前は開示に令状を必要としていたが、2012年から事項照会で応じるよう条件を緩和した。保有する情報が増え、社会的インフラとしての価値が高まってきたためだという。それなら、むしろ条件を厳しくすべきではなかったか。

 情報提供について、今後、会員規約に明記する方針を示したのは当然だろう。

 顧客情報を巡っては、入手できる企業など計約290団体のリストを検察当局が作り、内部で共有していることも分かっている。情報の大半は事項照会で得られると明記していた。

 令状なしでの収集が常態化しているのは看過できない。本当に要るのであれば、令状を取って入手すべきである。

 取得後も当局が情報をどう利用し、保存、管理しているか、外部で検証できる仕組みを作らなければならない。

 企業も安易に開示しない姿勢が求められる。