絶滅の恐れがある四国のツキノワグマの保護活動などを行う「日本クマネットワーク」(東京)が、これまで生息が確認されていなかった美馬市の山林で、2頭のツキノワグマの撮影に成功した。同ネット事務局長で東京農工大大学院の小池伸介准教授(生態学)が28日、徳島市の徳島大常三島キャンパス工業会館であったシンポジウムで報告した。
四国ではツキノワグマの正確な生息範囲が分かっておらず、同ネットは昨年7月、徳島、高知両県にまたがる剣山周辺で調査を開始。美馬、三好、那賀、つるぎ、神山の各市町などの山林に動きを感知するセンサーカメラ44台を設置し、同9月に回収した。
美馬市の山林で確認された2頭は、8月16、18の両日に計8回撮影された。カメラの近くの木に取り付けた蜂蜜入りの容器に近づく姿が捉えられており、2頭が一緒に行動する様子や体格などから、親子か兄弟の可能性がある。詳しい撮影地点は公表していないが、剣山周辺で繁殖し広範囲に分布していることが確認された。
四国のツキノワグマは人工林化や捕獲の影響で個体数が減少し、生息域は現在、剣山周辺に限られている。生息しているのは10~20頭程度とみられ、環境省の「絶滅の恐れのある地域個体群」に指定されている。
同ネットは、2018年度以降もカメラの台数を増やすなどして調査を続ける。小池准教授は「生息範囲や個体数を正確に把握できれば、有効な保全策を打ち出せる。50年後に100頭が生息できる環境を目指したい」と話す。