国内主要企業の労使が意見を交わす「労使フォーラム」が東京であり、2019年の春闘が始まった。

 米中貿易摩擦などによって経済の先行き不透明感が増す中、賃上げを今年も維持できるかが焦点となる。法令が整備された働き方改革でも成果が求められよう。

 労働組合の連合は、例年通り賃上げを最優先課題とし、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を重視した。「ベア2%程度」を基本として、定期昇給と合わせて4%の賃上げ要求を掲げる。

 気掛かりなのは経営者側の姿勢である。

 経団連は、多様な方法による年収ベースの賃金引き上げや、総合的な処遇改善を目指す方針を打ち出した。ベアを選択肢の一つとする賃上げに加え、仕事と生活の両立支援や人材育成を重視するというものだ。

 賃上げの重要性は認識しているとしつつも、消極的な印象は否めない。

 賃上げ率は5年連続で2%を超えている。安倍晋三首相が賃上げの旗振り役を務めた影響が大きい。

 経団連は今回「賃上げは政府に要請されて行うものではない」と訴え、前年までの「官製春闘」から脱却する姿勢も示した。首相も賃上げを要請したが、前回のように具体的な引き上げ率には触れず、トーンダウン気味だ。

 これまで維持してきた賃上げの勢いが失速してしまわないか、強く懸念する。

 現在の景気拡大が、戦後最長になったことが確実となったとはいえ、実質賃金は年平均で目減りしている。賃上げが続いたにもかかわらず、食料品などの価格が上昇したからである。「実感なき景気拡大」との評価が支配的なのは、望ましい状況ではない。

 企業が稼ぎを従業員に還元する「労働分配率」は下がり続け、一昨年は1970年代半ばと同水準にまで落ち込んだ。企業ばかり潤い、従業員が恩恵を受けられないような景気拡大では、社会の活力につながるはずがない。

 今秋には消費税率が10%に引き上げられる。思い切った賃上げで、消費の腰折れを防いでもらいたい。

 経団連が交渉方針に掲げた「処遇改善」も大事なテーマである。

 働き方改革関連法が4月から順次施行される。過労死を防ぐための長時間労働の是正や、格差をなくす同一労働同一賃金などは適正に実施されなくてはならない。

 改正入管難民法も4月施行となり、外国人労働者の受け入れを拡大する新制度へと移行される。関係する企業は、受け入れに見合う対策を十分に協議する必要があろう。

 業績を向上させるには、多様な人材が活躍できる職場づくりが欠かせない。賃金アップにも結びつくはずだ。

 働きがいのある労働環境の実現に向けて、労使が建設的な交渉を重ねることが大切である。