時間外勤務手当の報告書を偽造し、69万円余りを不正に受給したとして、徳島市教委は2日、市立幼稚園の50代女性学校事務員を懲戒免職処分にした。既に全額が返済されており、刑事告訴は見送る方針。

 市教委などによると、事務員は幼稚園に赴任した2014年4月から17年11月までの間に、時間外勤務があったことを市教委に報告する書類「時間外勤務等命令簿」を、園長に無断で36回作成。計302時間分の時間外勤務手当69万4274円を不正に得た。

 命令簿は園長と主任教諭だけに作成する権限があるが、事務員は自ら購入した園長と同じ名字の印鑑や、職員室にあった園長の印鑑を使って押印。超過勤務をした時間や「行事の準備」などの勤務内容を書き入れ、市役所の配送ルートで市教委に送っていた。

 市教委が昨年末、市立幼稚園事務員の勤務実態調査をした際、園長が「(女性事務員の)時間外勤務の報告をした記憶がない」と申告し、不正受給の疑いが浮上。関係者や本人に確認した結果、赴任以降に支払われた手当の全額が偽造した命令簿で申請されていたことが分かった。

 時間外勤務があったとした日時を調べると、休園日や本人の休暇日なども含まれていた。事務員は市教委の調査に対し「簡単に現金が手に入ると思ってやった」と話しているという。

 市と市教委は2日、園長や石井博教育長ら7人を文書訓告や口頭注意の懲戒処分とした。記者会見を開いた石井教育長は「公務員への信用を失墜させたことを心からおわび申し上げる」などと陳謝。再発防止策として、時間外勤務の承認は所属長だけでなく、複数人で行うように変更するとした。

 市教委は懲戒処分の発表に当たり、園や事務員の名前を公表しなかった。理由については「懲戒処分に関する人事院の指針に基づいた。園名を出せば個人が特定される」としている。