旧優生保護法(1948~96年)の下、徳島県内で知的、精神障害などを理由に本人の同意なく不妊手術を施された人が、391人いたことが、旧厚生省の資料で分かった。60、62、63、65~68年の7年間については、年齢区分などを記録した資料が県に残っており、その資料から105人が不妊手術を受け、このうち12人が未成年だったことが明らかになった。
旧厚生省の「衛生年報」によると、同意のないまま不妊手術を受けた人は同法施行期間中、全国で1万6518人に上る。徳島県では51~74年に手術が行われ、人数は全国で11番目に多かった。
県の資料は、県内の優生手術関連の統計などを記した「衛生統計年報」。旧法に従い、本人の同意なく手術を受けた105人の年齢区分や性別、居住地域などが記載されている。詳しい年齢や手術の申請理由などの記述はない。
年報によると、不妊手術を受けた人は≪別表≫の通り。年代別にみると、未成年は12人で、最も多かったのは30~34歳の36人。男女別は、男36人、女69人だった。
誰の同意もなく医師の申請によって施術されたのは100人、保護者らが同意した事例は5人。実施された年は、60年が47人で最も多く、65、66年は0人となっている。居住地域別では市部が42人、郡部が63人だった。
県内で年齢区分などが記載された資料の一部が見つかったことを受け、社会福祉法人・県手をつなぐ育成会の中山多美子事務局次長は「障害者を支援すべき国が公然と施策を進めていたことに怒りを覚える。手術を受けた未成年者の中には結婚をした人もいただろう。理解できない」と話した。
≪旧優生保護法≫ 「不良な子孫の出生を防止する」との優生思想に基づき1948年に施行された。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身。知的障害や精神疾患、遺伝性とされた疾患などを理由に不妊手術や人工妊娠中絶を認めた。医師が必要と判断すれば、本人の同意がなくても都道府県の「優生保護審査会」の決定で不妊手術を行うことが可能で、53年の国の通知は身体拘束や麻酔使用、だました上での手術も容認していた。96年、障害者差別や強制不妊手術に関する条文を削除し、母体保護法に改定された。