シェークスピアに気の利いたせりふがある。「ね、お前さん、この若いかたに、恋ってどんなものか教えてあげてよ」「それはもう、溜息(ためいき)と涙とでできたもんです」(お気に召すまま、阿部知二訳)

 そうは言っても、こんなやつらに引っ掛かって、涙は流したくない。今、社会問題となっている「国際ロマンス詐欺」の疑いで、関東在住のナイジェリア人の男らが逮捕された

 外国の軍人を装い、会員制交流サイト(SNS)で複数の女性と接触。恋愛感情を抱かせた上で「会いたい」とメッセージを送り、日本に行くプライベートジェット機代や「軍を辞めるための金」といった名目で、現金をだまし取ったとされる

 「そもそも、日本に住んでいるでしょ」と簡単にはいかないのが、ネットの恋の難しい点だ。男性も含む被害者の一人は約660万円を奪われたという

 ここはぜひ強調しておきたい。他人の写真を勝手に使うなど巧みな手口で、酸いも甘いもかみ分けたはずの中高年が被害に遭うケースが多いそうである。特殊詐欺と同様に、「私だけは大丈夫」といった心の隙間を、悪党は狙う

 これもまた、シェークスピアから。<勘定が出来るような愛情なら、貧しいものさ>(アントニーとクレオパトラ、本多顕彰訳)。見知らぬ男や女から、こじゃれたメッセージが届けば要注意。