長編小説「LOOP THE LOOP 飽食の館」を刊行したケイトさん=徳島市内

長編小説「LOOP THE LOOP 飽食の館」を刊行したケイトさん=徳島市内

 徳島市内に住むKate(ケイト)さん(35)=本名非公表=が、ミステリーサスペンスの長編小説「LOOP THE LOOP(ループ・ザ・ループ) 飽食の館」(双葉社、730円)の上巻を刊行した。携帯アプリで人気を集めた作品の出版化で、現代人の価値観や道徳観を問うヒューマンドラマだ。

 上巻は、大企業の若き社長冴木麗の失踪に始まる。都内で行方不明者が続出。主人公の高校生荒川零弥(レミ)も失踪事件に巻き込まれる。ある日、公園で眠ったレミが目覚めると、冴木ら若い男女11人がいる謎の洋館にいた。殺人劇の幕開けだった。

 物語は「幸せとは何か」という問いを主軸に、読者にさまざまな問いを与えながら展開する。登場人物の行動や心情を細かく描写しながら「何でも望み通りに生きられることを『飽食』に例え、欲深い人間は結局、幸せになれないのではないかと提示した」と言う。

 ケイトさんは幼少期から小説や映画、漫画、テレビゲームなど幅広い趣味を持ち、中学時代には現代詩を書くようになった。「LOOP―」の執筆に着手したのは、携帯小説が流行した2008年ごろだ。

 「文章だけで発表するより絵や音楽があると親しみやすくなる」と考え、携帯アプリとして配信。主なユーザーである10~30代前半の若年層が受け入れやすい設定と文体を心掛けた。

 演劇化もされ、都内の公演で評判を呼ぶと、月刊漫画雑誌「アクション」の編集者の目に留まり、コミカライズ化が決定した。

 小説の刊行が決まったのは、漫画の連載を開始した昨年6月。その後、原作の文章を小説の体裁に整えていった。原作アプリのダウンロード数は現在、200万回を超え、続編が制作されている。

 ケイトさんは「上、下巻を通じ、人はどう生きるべきかについて考えてもらう機会になれば」と話している。下巻は2月下旬に発売予定。