児童虐待や貧困で実の親と暮らせない子どもは、全国で約4万5千人に上るという。徳島県によると、県内では昨年4月時点で263人を数え、大半は児童養護施設に入所している。

 より多くの子を家庭的な環境で育て、健やかな成長を促すにはどうすればいいか。一つの選択肢として「特別養子縁組」がある。虐待や貧困に苦しむ子どものための制度だが、原則6歳未満とした年齢条件がネックとなり、活用できない例も少なくなかった。

 このため、法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、対象年齢を15歳未満まで引き上げる民法改正要綱案をまとめた。条件を満たせば15~17歳の縁組も例外的に認める。

 1988年の制度開始以降初めての見直しで、これにより対象は小中高生にまで広がる。社会の実情に合わせた対象の拡大は、制度の趣旨からいっても当然だ。

 特別養子縁組は、養父母となる人の申し立てに基づき、家庭裁判所の審判を経て成立する。実の親と法律上の関係が残る「普通養子縁組」と異なり、実の親との関係を法的にも断ち切る重い制度だ。戸籍上も養父母の「実子」と同等に扱われる。

 その分、要件が厳格なのはやむを得ないが、厚生労働省によると、特別養子を検討すべきなのに断念した事例が2014、15年度に計298件あった。今回の見直しでは、縁組の検討時に壁となりやすい実の親の同意要件や、年齢要件を緩和する。

 現行制度では、裁判所の審判で縁組が成立するまで、実の親はいつでも同意を撤回できた。改正案では、縁組同意から2週間がたてば原則として撤回できないように改める。縁組の申し立ては児童相談所の所長でも可能とする規定も盛り込んだ。

 近年、年間500~600件の特別養子縁組が成立している。年齢要件を緩和すればさらなる増加が期待できる。普通養子縁組と里親制度に、対象を広げた特別養子縁組が加われば、国が進める「施設から家庭へ」という流れも加速するだろう。

 心配なのは、年齢が上がるほど、親子関係を築くのが容易ではなくなることだ。自我が発達し、実の親の記憶も残る小中学生の意思をどうくみ取るか。思春期を迎えればさらに難しくなろう。

 虐待があった場合には専門的なケアも必要で、こうした子どもと向き合う養父母の負担は重い。必要な時に、十分な支援の手を差し伸べる仕組みづくりが欠かせない。

 とりわけ本県では、里親制度ですら全国に比べて立ち遅れており、公的な支援の充実が急がれる。行政の果たす役割は大きい。

 政府は、今国会に特別養子縁組に関係する民法改正案を提出する予定だ。参院選が近づき、対決色が強まることも予想されるが、与野党は子どもの利益を第一に、幅広く議論してもらいたい。