フランス南西部・ジロンド県在住の齋藤美和さん(28)=藍住町出身=が、同国の小学生たちにボランティアで藍染を教えている。原点となっているのは、藍住南小学校時代の藍染体験。当時指導を受けていた女性への手紙に、齋藤さんはこう書いていた。「世界中の人に藍のすばらしさを知ってほしい」。かつての願いを自ら実践するとともに、フランスの子どもと母校の後輩たちとの交流に一役買っている。
藍住南小では、地域の伝統文化を学ぶため1999年から藍染体験を取り入れ、齋藤さんは1期生だった。藍染作品を手掛けている清水啓子さん(71)=同町奥野=が指導に当たり、体験した5年生全員がお礼の手紙を書いた。
齋藤さんは「藍は生きています。大切にしていけば、もっとすばらしいものになるし、藍をこの小学校だけで終わらせたくない」とつづり、結びで世界に魅力が広がることを願った。清水さんは今も、手紙を大切に保管している。
齋藤さんは城東高校1年生の春休みに、フランスのル・アーヴル市の高校へ留学し、「フランスをもっと知りたい」と、東京外国語大に進学。夏休みを利用して年1回は訪れるほど、魅力にとりつかれた。
転機が訪れたのは、徳島に帰省していた23歳の時だ。藍住南小近くで小学生時代の恩師と偶然再会し、これから何をすれば良いかを悩んでいることを打ち明けた。
「昔やっていた藍染をしたらいいんじゃないか」。恩師からそう言われ、「植物の力でこれだけ美しい色を出せる藍染なら、美意識と本物志向が強いフランスでも受け入れられるのでは」と思った。
かつて藍染を教わった清水さんを訪ね、1年半ほど清水さんの自宅に通いながら藍の建て方などの基礎を学んだ。上板町の藍師から染料のすくもを購入し、フランスに向かった。
14年5月にはフランス人の男性と結婚。16年12月、海外の人たちにも日本の素晴らしさや日本らしさを感じてもらおうと、男性の兄弟と共にNPO「Nipponia(ニッポニア)」を立ち上げた。現在は男性の母親が営む農場で、小学生たちに藍染や着物の着付け、阿波踊りなどを教えている。
徳島へ帰った時には、藍住南小へ立ち寄る。フランスの小学生から預かった手紙やクリスマスカードを渡す一方、藍住南小児童からは習字や折り紙の作品を受け取りフランスの小学生に届ける。3月にはインターネットの電話でお互いの顔を見ながら、会話することも検討している。
清水さんは「かつて教えた子どもが、藍に携わり魅力を広めてくれてうれしい」と目を細める。
「藍染は育て方一つで出る色味も違う。発酵させて作る染物はフランスでは珍しく、注目されている」と話す齋藤さん。「試行錯誤して出す一期一会の藍色が楽しみ。これからも日本と世界をつなぐ活動をしていきたい」。これからも藍の魅力を世界に発信し続ける。