大杉漣さんは、J2徳島ヴォルティスのホームゲーム観戦や音楽ライブで帰県するたびに、友人を連れて鳴門市撫養町の「あそこ食堂」に足しげく通った。東京の知人らにも勧めるほれ込みようで、店主の細川稔彦さん(81)は「本当にありがたかった」と感謝しつつ、早すぎる死を惜しんだ。
大杉さんは、あそこ食堂の常連だった知人と一緒に、5、6年前に初めて来店した。以来、「こんにちは」と言いながらのれんをくぐると、4人掛けのテーブル席に座り、棚に並べられた焼き魚や煮付けに手を伸ばした。うどんやおでんも注文し、おいしそうに食べていた。
知人が来店する前には「友達が行くからよろしく」と、必ず店に電話を入れる心配りを欠かさなかった。
最後に訪れたのは昨年10月ごろ。「おいしかった。また来ます」。細川さんといつものあいさつを交わしながら店を後にした。
店内に飾られた大杉さんのサイン色紙には、判読できない文字がある。細川さんの妻多美子さん(78)は「今度来てくれたら聞こうと思ってたのに。もう会えないと思うととても寂しい」と肩を落とした。