漁師の父を持つ姉妹2人の夫が、ともに結婚を機に脱サラし、妻の実家がある阿南市で漁師になった。いずれも結婚するまで漁業に興味はなかったが、義父から話を聞くうちに関心を持ち、一念発起した。昨年から海に出て底引き網漁の技術習得に励む2人は「多くの経験を積み、早く一人前になりたい」と意気込んでいる。
漁師になったのは大阪府吹田市出身の山本敬俊さん(25)=阿南市領家町横枕=と、徳島市出身の土手伸一郎さん(24)=阿南市那賀川町上福井。山本さんの妻・愛弓(あゆみ)さん(25)と、土手さんの妻・郁弥(いくみ)さん(22)は姉妹。2人の父・武田強さん(49)=同市領家町横枕=は漁師歴約20年で、武田水産の代表も務める。今も漁に出ている現役だ。
山本さんは関西の大学を卒業後、東京のリース会社で営業マンを務め、大学で知り合って交際していた愛弓さんと16年11月に結婚した。土手さんは徳島科学技術高校を出て阿南市の化学会社に就職し、会社で知り合った郁弥さんと15年9月に結婚した。
武田さんから漁師の仕事について聞くうちに、山本さんは「頑張っただけの成果がある所に引かれた」と興味を抱き、土手さんも「変化が少ない会社勤めより面白そう」と胸が躍った。
山本さんは会社を辞めた昨年1月から、土手さんは同5月末に退職して同6月から武田さんの下で修業した。漁場の見極め方や機械の使い方、トラブルへの対応などの基本をたたき込まれた。
山本さんは高校、大学とアメリカンフットボール部に所属し、土手さんは高校で重量挙げに励むなど、体力に自信はあったが、船酔いには苦戦。2カ月以上かかって克服した。船舶免許や操業許可を取得し、昨年末からは2人だけで漁に出る機会が増えている。
2人が所属する阿南中央漁協の組合員は約120人で、60~70代が約8割を占める。後継者が不足する中、地元の期待も大きい。2人は「苦労は多いが、魚が多く捕れた時の喜びは格別。毎日が充実している」と、やりがいをかみしめている。