吉野川市のNPO法人TICOのプロジェクトリーダーとして、アフリカ南部のザンビアで現地医師への心臓手術の技術指導に当たった。「ザンビアで初の心臓外科医の育成。絶対に失敗させるわけにはいかなかった」と大きな重圧を感じていたという。手術が無事に成功し、「本当にほっとしました」と柔和な顔をほころばせた。

 大阪府枚方市出身。高校3年の夏、アフリカで医療支援を行う日本人医師のドキュメンタリー番組をテレビで見て心を打たれた。兵庫医科大に入り、心臓外科医を目指して同大医局などで経験を積んだ後、2007年から順天堂大医学部付属順天堂医院(東京)に勤務。そこで指導を受けたのが、天皇陛下の心臓手術を執刀した心臓外科医の天野篤医師だった。

 天野医師の指導は厳しく執刀中に注意を受けたことも数知れない。「手技はもちろん、心臓外科医としての覚悟や患者への向き合い方など、さまざまなことをたたき込まれた」と、照れくさそうに振り返る。

 一方、国際支援に取り組みたいとの思いは年々強くなっていた。そんな時、TICOのホームページにたどり付く。ザンビア支援に奔走する吉田修医師が、かつてテレビで見た日本人医師と重なった。15年1月、迷うことなく吉田医師が営む吉野川市の「さくら診療所」の門をたたいた。

 今月末には再度ザンビアに赴き、現地医師による手術に指導助手として参加する。「執刀中に教えるべきことはたくさんある」。天野医師から受け継いださまざまな手技を、全てザンビアへ伝えるつもりだ。

 徳島市佐古八番町で父親(70)と2人暮らし。45歳。