カウンセリングを終えた相談者が帰る際、玄関脇にある姿見に映った自分を見て「あっ」と声を上げる。来たときはうつむき加減で鏡があることにすら気付かなかったのに帰るときは姿勢も表情もまるで違う。「話すことで気持ちに変化が生まれ、外見にも現れる。自分の変化に驚く瞬間に立ち会えることが何よりの幸せ」と穏やかにほほ笑む。
新潟市で動物病院を開業した夫の下に嫁いで約40年。病院の経営を支えながら2人の子どもを育てた。長男が通う中学校のPTA会長になったころ、全国的にも学校でのいじめ問題が深刻化していた。「私にできることは何か」。毎朝校門に立って生徒にあいさつし、何か様子がおかしければ教員に伝えた。こうした活動をきっかけに、幼いころから憧れた心理カウンセラーを志すように。放送大学などに通って認定心理士の資格を取得。病院横に開いた相談室は今年で16年目を迎えた。
相談に訪れる人は10代から80代までと幅広い。社会生活になじめずにひきこもる人は「周囲に理解されず、生きづらさを抱えて心を閉ざしてしまう。社会に戻るには、ひきこもった期間の2倍の時間を要することもある」。相談者の金銭的負担を少しでも減らそうと会話を急いだこともあるが「自ら語り始めるまでとことん待つ。じっくりと傾聴し、共感することが肝心」とし「誰も皆、何かきらりと光るものを持って生まれてきている。そのことに気付いてもらうことが大切。答えは本人の心の中にある」と語る。
人の幸せを願って心を尽くしてきた背景には、東みよし町での思春期にお世話になった担任教員への恩返しの思いもある。「他人に関わるのは勇気や労力が必要だが、徳島の人々は何げなくもてなすパワーがある。それが徳島の最大の魅力」。古里で培ったお接待の心を今後も発信し続ける。
こじま・たかよ 東みよし町出身。旧姓高橋。池田高校、麻布公衆衛生短期大環境衛生科(現麻布大環境保健学部)を卒業後、財団法人残留農薬研究所(東京)勤務を経て結婚を機に新潟市に転居。外国人留学生の受け入れや日本語指導のボランティア活動に取り組んできたほか、新潟市教育委員、新潟簡裁・家裁の調停委員なども歴任し、2003年に心理相談室を開設した。新潟市在住。63歳。
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