藍住町の自宅敷地内に設けた県内初の自立援助ホームを「ゆめ」と名付けた。「ホームを出た子が将来自分の家庭を持って、子どもの顔を見せに来てくれるのが夢なんです」

 家庭的な雰囲気にこだわり、ホームの見た目は一般住宅と変わらない。女性専用で定員は6人。入所できるのは義務教育終了後から20歳までで、大学などに進学していれば22歳まで暮らせる。高校卒業と同時に自立を求められる児童養護施設退所者の受け皿として期待されている。

 大学時代は児童福祉を専攻。50代を迎えるまで、知的・精神障害者福祉施設や藍住町社会福祉協議会の職員として障害者や生活困窮者の支援に携わってきた。

 子どもの社会的養護への思いを強める転機となったのは東日本大震災だった。親を失った女子中学生が海に向かって「お母さん」と叫ぶ様子がニュースで流れ、心が揺さぶられた。一方で、育児放棄や虐待で子どもが犠牲になる痛ましい出来事も多く、自分にできることはないかと自問自答を続けた。

 ホームの運営に必要な知識を身に付けようと、2014年に児童発達支援センターの施設長に転職。子どもが自立するまで預かる「養育里親」の研修も受け、小学生の女児を家庭に迎えた。昨春、3歳の女児も新たに加わり「3人の娘の下に四女と五女ができた」と目を細める。

 幸せを分け与えたいとの思いから始めた里親だったが、結果的には家族全体の会話や笑顔が増えた。「幸せや優しい気持ちをもらったのは僕たちの方で、分け与えるなんて傲慢(ごうまん)な考えでした」

 念願だったホームの建設には自己資金が不足し、銀行から数百万円の融資を受けた。最初はあきれ顔だった妻もへそくりを出してくれた。2月には1人の入所が決まっていて、職員2人と準備に追われている。55歳。