消費者庁の消費者行政新未来創造オフィスが徳島県庁に開設され、24日で半年を迎える。同庁はオフィスを置く徳島を消費者行政の実証フィールドと位置付ける。その一環として、消費者心理を解析する「行動経済学」の観点から、チラシが消費行動に与える影響を分析する研究プロジェクトの社会実験を今月、始動させた。研究結果を同庁の政策立案につなげる考えで、地方拠点設置の意義の検証面からも、成果が注目される。
消費行動の社会実験は、行動経済学の権威でオフィスの客員研究主幹を務める依田高典京都大大学院教授が主導し、とくしま生協(本部・北島町)の組合員を対象に行う。
15日から2月にかけて組合員約5万7千世帯に消費行動や食の知識に関するアンケートを実施。うち約1万人には、秋から1年余りにわたるモニター調査にも協力を求める。協力者には体重や運動・睡眠時間を日々記録してもらうほか、グループに分けて、異なる健康情報を掲載したチラシを配り、生活習慣や商品の購買傾向にどのような違いが出るかを調べる。
オフィス研究専門職の中村大輔プロジェクトリーダーは「独自に大規模な社会実験を行うには多額の経費がかかるが、今回は生協の協力で実現できた。今後の官民連携のモデルになる」と話す。
社会実験では京大の依田教授をはじめ大阪大や北九州市立大など、西日本からも有識者が参加している。この点でも地方拠点を構えたことを生かしている。
このほか、消費者庁が全国展開を目指す公益通報制度の市町村窓口は、いち早く24市町村全てで整備された。高齢者や障害者らの消費者被害を防ぐ見守りネットワークの構築プロジェクトでは、昨年12月に官民36団体が推進組織を発足させた。上板町などで消費者団体や警察、民生委員などが連携し、悪質業者から狙われる可能性がある高齢者を事前に把握し、被害の早期発見や防止を図る取り組みが始まった。
オフィスの一角を占める国民生活センターは、県内のモニター家庭100戸を対象に、給湯器の設置状況調査を昨年10月末にスタートさせた。起震装置での実験を経てアンカーボルトなどでの固定方法の違いが大地震発生時の転倒事故に及ぼす影響をまとめる。
消費者委員会の専門調査会による事業の検証も始まった。検証結果は、政府が開設3年以内に行う全庁移転の可否判断にも影響を及ぼす見通しで、今後、地方拠点の可能性や課題について議論が本格化するとみられる。