2021年に京都市へ全面移転する文化庁は昨年4月、同市東山区に地域文化創生本部事務局を先行して開設し、全面移転に向けた準備や新たな業務に取り組んでいる。事務局には三つのグループが設けられ、「暮らしの文化・アートグループ」のまとめ役として11人の部下とともに仕事に臨んでいる。

 「文化芸術」は幅が広い。その中で茶道や囲碁将棋、伝統工芸、祭礼など生活に密着した暮らしの文化全般の振興、人材育成を受け持つ。「これまで文化庁として注目していなかった分野だが、間口が広く取っつきやすいのが特徴。地域や関連団体の力を借りながら、新たな取り組みを進めたい」と意気込む。

 昨年度までは東京・霞が関に勤め、国立美術館や国立文化財機構などの組織管理、文化財補助金の取りまとめのようなデスクワークが業務の多くを占めていた。京都異動後は、各種団体との意見交換や地域イベントの協力など外部との関わりが増えた。「建物の一歩外に出れば国内外の観光客や住民らとすれ違う環境は刺激的」と笑う。

 事務局の人員は38人。文化庁からは10人で、あとは関西広域連合所属自治体の職員や企業などから派遣された者と業務に当たる。「地方創生が叫ばれる中、国と地方が目線を同じにして仕事をする必要がある。京都に本部ができたことで、相互理解や連携強化をさらに活発化させたい」

 小学2年から徳島少年少女合唱団に入り、中学、高校ではオーケストラ部でトロンボーンを担当し、今も趣味としている。「徳島で音楽に親しんだ日々が人格を形成した」と目を細め「徳島から離れた立場で見れば、音楽に限らずアートや文化活動は活発だと感じる。いろいろな人をつなぎ、徳島の文化を支えるような手伝いをしたい」とほほ笑んだ。

 やまぐち・そうはち 徳島市出身。徳島中、城東高、徳島工業短期大学部卒。徳島大職員などを経て、1993年、文化庁に入る。芸術文化や文化財保護などの業務に就き、現職の直前は芸術文化課課長補佐を務めた。千葉市の自宅に妻と2女を残し、京都市で単身赴任。49歳。