Jリーグで優勝3度を誇る広島の再建を託された。前身の東洋工業時代から日本サッカー界を引っ張ってきた名門の指揮を執ることに「一員となれて光栄。今までの良さを踏襲しながら新たなものを見いだしていきたい」と力を込める。

 オファーに迷いはなかった。クラブの規模は大きくなく、選手の入れ替わりも少なくない中、好結果を残し続ける強さに興味があった。監督就任後に住み始めた広島はサッカーが盛んな土地。「街の人はサッカーをよく知っている。それがクラブを後押ししているのかも」と強さの秘密を感じ始めている。

 目指すサッカーは、人もボールも動き、何より見ている人の心を動かす「ムービングフットボール」。試合で常に主導権を握れるよう、選手には基本となる技術や戦術を高いレベルで求め、ピッチで表現していく。「一戦一戦にこだわり、見ている人が楽しさを感じてくれれば」

 徳島市出身。日本サッカー協会で若手育成に携わり、2008年にFC東京の監督に。それから10年。J1でリーグ杯を制し、J2優勝も経験した。「うれしいことは一瞬。苦しいことの方が多い」。それでも指揮を執り続ける原動力は選手、チームを成長させ、日本サッカー界に貢献したいという使命感だ。

 J2徳島ヴォルティスから渡大生、馬渡和彰の両選手が加入し、古里から一段と注目を集めそうな今季、これまでで最も古里に近いチームを率いる。「同窓会では『もっと多く徳島に帰ってくるよ』と話してきた」と笑った。56歳。