総務官僚を退官後、都内在住ながら徳島大で客員教授を務め、主に気候変動問題などの国際公共政策を担当。「徳島とつながりを持ちたい」と古里への恩返しの思いを胸に第二の人生を歩んでいる。

 官僚時代は世界各国が政策立案する際の基盤となる統計データの国際基準の交渉・策定や、発展途上国の統計データ整備のための技術・資金協力といった業務に長年従事した。総務省国際統計管理官、国連統計委員会日本代表などの要職を歴任し、その分野の国内調整と国連外交の責任者を務め、国連、経済協力開発機構(OECD)や各国開催の国際会議に多数出席した。

 文化や民族の異なる諸外国との交渉はタフな仕事だったが「統計の世界では互いに協力していいデータをつくり国際比較性を高めるのが目的。言うべきことは言うが、決してエゴを主張し過ぎることなく相手の信頼を得ることが重要」とし「公務員は組織の歯車ではあるが、その歯車を磨いて機能させれば非常に大きな仕掛けの中で意味のある一部になれる」と語る。

 官僚時代に米ハーバード大ケネディ行政大学院、ジョンズホプキンス大高等国際研究大学院などで学んだ際、教授と学生のインタラクティブ(双方向)な授業に刺激を受け、自らも学生とのコミュニケーションを大切にしている。「今の若者はインターネットをうまく活用し入念に準備して講義に臨む。積極的かつ冷静に学ぶ姿に感銘すら覚える」と評価。次代を担う人材育成にやりがいを感じており「机上の理論やセオリーだけでなく、実社会に存在する利害関係や物事の背景も教えていきたい」

 講義以外でも年に数回帰省する徳島について「食材など良い素材はあるのに認知度が低い」と指摘。「阿波藍や鳴門の塩業といった伝統産業と、LEDなどの先端技術を組み合わせてたコンセプトづくりが重要」とアドバイスした。

 きもと・あきひろ 小松島市坂野町出身。城南高、東京大法学部を卒業後、旧運輸省を経て旧総務庁・総務省で主に国際統計基準の交渉・策定、発展途上国におけるデータ整備や人材開発などに従事した。米ワシントンのシンクタンク客員研究員や在英大使館一等書記官など計7年間在外勤務。2012年4月から現職。東京都稲城市在住。66歳。