2013年新年企画の紙面

【上】から続く

 大杉漣 ツアーとかで毎日のようにライブやってても、ステージに立つときの気持ちって毎回違うでしょ。

 橋本絵莉子 はい、本当に違いますね。今もツアー中なんですけど、場所によって環境も違うし、お客さんの反応も違うし。自分のコンディションによって、その反応の受け取り方も変わってきたりとか。

 大杉 なるほど。舞台も一緒なんよ。慣れることはないんよね。毎回、お客さんの反応や意見も違うし。ただ、せりふは自分の言葉じゃないから、作家の言葉をどういうふうに自分の感性や身体を通して話すか、というのが勝負になってくるんやけど。

 福岡晃子 緊張しますか。

 大杉 過緊張はないんやけど、でも僕らの仕事って緊張はある意味ものすごく必要やと思う。あとね、昔、能を大成した世阿弥っていう人が「表現者は、一生懸命演じたり歌ったりすることも大事だけど、その自分を客観的に見る目もどこかできちんと持つことも大事」って言ってるんですね。これはなかなか難しいことやと思うけど。そういう感覚って分かる?

 橋本 レコーディングで歌うときに感じますね。デビューしたてのころは、もう夢中すぎて何も考えれんかったんですけど、最近は「こう歌ってみたらどうかな」って、歌いながらどこか、自分を冷静な目でコントロールできるようになったというか・・・。

 福岡 ライブの最中は、お客さんを自分の鏡やと思ってるから、お客さんの顔を見て、今の自分がどうなんかっていうのを感じるようにはしてます。

 大杉 ああ、それすごく大事だよね。けど今って、ネットとかで誰でも意見が自由に言えるでしょう。表現者としては、周りの反応を気にせなあかん半面、気にしすぎたらあかんのよね。

 福岡 ほんまにそうなんです。でもどうしても気になるんですよね、いろんなことが。けど、それを「いや、どう言われても私たちはこうやもん」って思えて超えられたら、またちゃう景色が見えるようになって・・・の繰り返しなんですね、ずっと。2人になったときも、もちろんいろいろ言われましたけど、それって覚悟しとったことなんで。そういうのぜーんぶ受け止めて、あらためて出発しようって思いで「変身」ってアルバム作ったんです。

 大杉 僕は「変身」の(スタジオライブ)DVD見て、何ていうか、表現の海を自由にたゆたってる2人、みたいな感じがしたんよ。それがほわほわしててすっごく気持ち良かった。「ほな行こかー」って言って、いきなり太鼓だけ叩き始めるんとかね。ものごとの始まりとか出発ってこんな感じやんな、って。

 橋本・福岡 うふふふ。

 橋本 いろいろ考えすぎても、結局、元のところに戻ってくるだけやったりすることが多いんです。やから、あんまり考えすぎずにやっていきたいなって思っています。

 大杉 分かります。考えても堂々巡りになることってよくあるよね。

 福岡 前に瀬戸内寂聴さんとお話したときに、そういう話をしたら、寂聴さんに「アーティストは危ない方の道を選びなさい」って言われたんです。「普通の人にはこんなこと言わないけど、あなたたちはアーティストでしょ」って。2人になるって決めた後とかにその言葉を思い出して「ああ、こういうことか」って思いました。いろいろ考えても、結局は危なくても自分たちが惹(ひ)かれる方の道を選んでるんですよね。

 大杉 いやー、すごい言葉やね。でもめっちゃ分かる。僕たちのいる表現の世界って、そういう「安心」とか「安定」みたいなものってないんですよね。今年は30歳ですか。どんな感じになりたい?

 橋本 さっきの続きみたいですけど、あんまり細かいこと考えずに、バンドやってたいなって思います。

 福岡 正直、自分たちでも今年どうなっていくのか分からないんです。何人になるのかさえ分からない。あはは。けど、音楽続けていきたいですね。

 大杉 僕はこれからもさまざまな人と、とんでもないことしたいなって気持ちがあるかな。

 福岡 初めての役とかもどんどんやる感じですか。

 大杉 そうそう。それで、良いお父さん役もやるし、すっごい悪い役もやる。そういう振り幅を、もっと大きくしたいと思いますね。イメージとは違う役も、せっかく監督やプロデューサーが「遊んでみようや」って言ってくれてるんやからって気持ちで、できるだけ挑戦していきたい。「自分てなんやねん、どこ行こうとしてんねん」て、自分でも分からないくらいいろんなことしたいですね。

 福岡 なるほど。かっこいいですねぇ。でも今日で、大杉さんの印象かなり変わりました! なんか、ほんま親戚のおっちゃんみたい。あははは。

 大杉 もう親戚のおっちゃんと一緒やでぇ。

 橋本 すごい! なんか、かなり徳島におる気分。不思議。アンジェラ・アキさんに会ったときも、すっごい変な感じになるんです。

 福岡 うちらより徳島持って来てくれるけんなあ。「阿波弁広めようと思っとんよ~」ってめっちゃ言ってて。

 大杉 そうそう。アンジェラさんとテレビ局ですれ違ったとき、初めて会ったのにいきなり「徳島ですよねぇ!?」って大きい声で言われて。そしたらもう「おう、そうそう! 仲間や!」みたいになって(笑)。

 橋本 徳島の人ってやっぱ・・・すごいですよね。

 大杉 面白いよねぇ。阿波弁ってなんか、醸し出すものがあるよね。標準語ではなかなかこうはなれんよね! 今度は徳島で会いたいねぇ。

 福岡 会いたいです! そんで3人で、いきなりノリでライブやったりしてみたいですね!