かつて「世界一」の座に輝いた男たちが徳島県内にいる。1人はBMX(バイシクル・モトクロス)、もう1人はアームレスリングの競技だ。一線を退いていた2人は今、新たな挑戦に向けて動き出した。再び世界の舞台を目指して。

 BMX森崎弘也さん 「五輪」夢じゃない

BMXフラットランドの技を披露する森崎さん=徳島市中徳島町2

 

 20インチの自転車を使用し、平地で技の難易度や独自性を競い合う自転車競技の一種「BMXフラットランド」。藍住町奥野の森崎弘也さん(41)は2007年、3カ国で開かれた同競技史上初の世界サーキットで初代総合王者に輝いた。

 その後も国内外の大会を転戦し、スポンサー契約や世界各地でのイベント出演など、プロBMXライダーの先駆者として活躍する。

 引退後を見据え、13年から静岡の自転車店で働き始めた。16年には東京・麻布で自転車とアパレルを扱う系列店の店長を任される。経営に追われて練習時間を確保できず、大会にほとんど参加できない状況に陥っていく。

 転機となったのが、18年4月に日本で初めて広島で開催された都市型スポーツの世界大会「FISE」。BMXやスケートボードなど25種目以上の競技が一堂に会する国際イベントだ。同大会で2度の優勝歴を誇る森崎さんはブランクをものともせず、日本人最年長にして最高位の5位入賞を果たす。「まだ選手としてやれる手応えをつかめた」と言う。

 競技に専念するため店を離れることを決断し、18年7月に帰郷した。現在は、実家の家業を手伝いながら練習に励んでいる。当面の目標は、昨年に続いて広島で行われるFISE。この大会を皮切りに、再び世界へ打って出る計画だ。

 20年の東京五輪では同じBMXの種目「パーク」が正式種目になり、24年のパリ五輪ではフラットランドが採用される可能性がある。「もう一度世界の頂点に立てれば五輪出場も夢じゃない」と意気込んでいる。

 アームレスリング・服部剛志さん 重ねた経験を力に

ジム生と実戦練習をする服部さん=鳴門市大津町矢倉

 アームレスリングの世界で1999年に世界王者になったのが、鳴門市撫養町の服部剛志さん(46)だ。

 鳴門高校野球部の元球児。卒業後、個人競技に興味を持ち、22歳でアームレスリングを始めた。腕相撲では中学時代から大人にも負けた記憶がなく、自信もあった。

 3年目には全国大会で初優勝し、98年にカナダで開かれた世界選手権では初出場ながら60キロ級で2位になった。東京で行われた99年の世界選手権は同級で優勝した。

 世界選手権は計7回出場し、65キロ級、70キロ級と階級を上げながら全ての大会で6位以内に入賞した。2007年に現役を引退して以降、代表を務めている鳴門市内のトレーニングジム「超腕ジム」で指導に努めてきた。

 大会への復帰の思いが強まったのは、引退後も続いている元ライバルとの交流だ。現役を続けている選手もおり、顔を合わせて「同年代の者同士でまた勝負がしたいね」と話しているうち、再び闘志が芽生えてきたという。

 3年ほど前から本格的な練習を始めた。「年を重ねて経験を積んだからこそ、今の自分に合った合理的なトレーニングを考えられる。若い頃にはできなかったことができる」と言う。

 体幹を鍛える基礎トレーニングや、伸び盛りの若いジム生ら相手の実戦練習にほぼ毎日取り組んでいる。地域の練習会に参加し、徐々に試合感覚を取り戻している。「近い将来にマスターズの大会に出場したい。そして、やるからには世界大会も目指してみたい」と力を込めた。