6日に閉幕した第64回徳島駅伝(徳島陸協、徳島県、徳島新聞社主催)は、鳴門市が2年連続35度目の王座に就いた。2位徳島市とのタイム差はわずか1分46秒。近年では、鳴門市が51秒差で美馬郡を抑えて優勝した第54回大会以来の激戦だった。名東郡はフル出場という悲願を52年ぶりに成し遂げ、全43区間256・8キロを完走。選手確保に悩む各郡市に明るい話題を提供した。
鳴門市で際立ったのはやはり実業団選手の安定ぶり。14区で松本(大塚製薬)が今大会唯一の区間新記録を出すなど一般21区間のうち、7区間を制し、逃げ切り優勝の原動力となった。課題はやはり若手育成だろう。中学生が3区間を制すなど徐々に結果は出ているが一般だけに頼らないチームづくりの必要性をあらためて感じさせた。
区間賞は鳴門市の12に対して徳島市8。徳島市は爆発力には欠けたが、長丁場などで鳴門市に懸命に食い下がった。中学生は男女計10区間で鳴門市よりも速かった。将来性の豊かな大学生も多く、さらに成長すれば王座奪還は近い。
3年連続でメダルを獲得した小松島市は4位との差を前回より広げた。大会初の4年連続最優秀競技者賞(MVP)に輝いた大西(プレス工業)らの力を生かした結果だが、2強に迫るには中学生、女子の強化が急がれる。
4位の阿南市は部門別で5年連続1位となった女子と、2年ぶりに制した中学生が実力通りの走りを披露。特に初日15区からの3連続区間賞、最終日39区からの追い上げは見応えがあった。5位の板野郡も中学生総合は3位と若手育成に熱心で取り組みが結果となって現れている。阿南市、板野郡とも一般のさらなる底上げに期待したい。
6~8位は3日間を通じて美馬市、名西郡、海部郡で、2年続けて順位の変動がなかった。入賞した郡市の中で、名西郡だけが区間賞がなかったが、堅実な走りが7位に結びついた形だ。世代交代がうまく進めば、上位争いに加わることができるのではないか。
少子化、過疎化の影響を受け、中位以下の郡市は毎年、選手不足によるチーム編成に苦しんでいる。3日間を走り抜く戦力が整わないチームは少なくない。
4年連続で最下位の三好郡は、一般の4区間を中学生に託す苦しい布陣だった。名東郡も完走を果たしたとはいえ、24人のうち19人が2区間を走らざるを得なかった。
今後もたすきをつないでいくためには、次代を担う選手の確保が不可欠だ。地元に小学生の陸上クラブがある阿波市の野口新介監督は「チーム内にクラブ出身者は増えている」と言う。阿波市は今回、順位を一つ落としたものの、貴重なレース経験は次につながるはずだ。各郡市で事情は異なるだろうが、長期的視点に立った育成を継続してほしい。
新人賞に選ばれた阿南市の児島(羽ノ浦中)、海部郡の戎井(由岐中)は共に前回の小学生特別区間を経験した選手だ。
2年の試行期間を終え、次回以降の設置は未定だが、卯木英司大会長(徳島陸協会長)は「盛り上がりを感じている。やり方を含めて発展的に考える」と話す。徳島駅伝の使命の一つである選手発掘・育成を念頭におきつつ、さまざまな角度から関係者と各郡市が知恵を出し合ってほしい。