子どもには食べる権利がある。この世に生まれたのは早死にしたり、虐待されたりするためではない。生まれてきたものが幸福に、安全に、健全に、成長発達すべきものであることは明らかだ-

 「子どもの権利」が一般には頭の隅にもなかった1924年、貧民救済に尽力した社会運動家・賀川豊彦はまさにその演題で講演をしている。「まず第一に」と生きる権利を挙げ、都合六つの権利を掲げた

 子どもには叱られる権利がある、とも指摘した。「叱る」とは悪を正し、不義を正すこと。感情を爆発させる「怒る」とは違う。悲しいことながら賀川の問題提起は今もって有効だ。「本当に『叱る』人は少なく、『怒る』人が多い」

 県内でも、児童虐待が後を絶たない。徳島県警が昨年、虐待を受けた疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の子どもは322人(暫定値)で、前年より108人増えた

 これだけの数に上るのである。千葉県の栗原心愛(みあ)さんと同じ苦しみをこの瞬間にも味わっている子どもたちが、きっと私たちの周りにいる。耳を澄まそう。SOSを聞き逃さないように

 賀川が訴えたのはあと四つ。「子どもは遊ぶ権利がある。子どもは寝る権利がある。親に夫婦げんかをしないよう求める権利がある。禁酒を要求する権利がある」。異議を差し挟む余地はない。