トップでタッチ板をたたいた瞬間の笑顔に、どれほどの人が鼓舞されてきたか。今年も、来年の東京五輪も、競泳女子のヒロイン候補として真っ先に名が挙がるのは池江璃花子選手である

 昨夏のジャカルタ・アジア大会で6冠を達成し、最優秀選手にも選ばれるなど、他を寄せ付けない活躍ぶりには目を奪われた。6個目の金メダルに輝いた時の泳ぎを再現すれば、こうだ。<鋭く飛び込んで浮き上がり、しばらくほぼ横並び。中盤、池江が予定通りギアを上げた。長い腕で素早く、かつ丁寧に水を捉え、スピードに乗る>

 しなやかな泳ぎで終盤にライバルを振り切った様子を、昨年8月の本紙スポーツ面のハイライト記事が伝える。まだ18歳。どこまで伸びていくのかと、うなったものだ

 前途洋々の彼女を突然、病魔が襲った。白血病だという。あまりに無慈悲な仕打ちではないか、と叫びたくなる

 過去に白血病を患った俳優の渡辺謙さんは自身のツイッターでこう励ました。「今の医学を信じ、自分の生命力を信じ、前を向いて焦らずにしっかり治療に専念して下さい」。病に打ち勝ち、復帰を果たした人の言葉は心強い

 レース後の爽快感に満ちたあの笑みは必ず戻ってくる。そう確信する大勢の祈りが今、池江選手に送られていることだろう。徳島からも、世界からも、である。