歌手の小椋佳さんといえば、生前葬コンサートを開いたことでも知られる。古希を迎え、内なるエネルギーの減退を感じ、自ら「けりをつける」頃合いだと考えたという

 曲にまつわるエピソードを紹介した「小椋佳 生前葬コンサート」(朝日新聞出版)には、それまでの出会いも記した。人生の道筋を決めてきたのは自身の意図や努力というより、むしろ思いがけない出会いである「邂逅」だと書いている

 小椋さんの「終活」に思いを巡らせながら、徳島市でおととい開かれた「終活フェア」を見て回った。遺影撮影コーナーは受け付け前から人の列。自分の納得のいく一枚を遺影にしてほしい。葬儀の面倒を少しでも軽くしたい。そんな理由で撮影は増えているようだ

 親族間の相続トラブルはよく聞く話である。争いを防ぐために公証役場で遺言を作る人は、ここ10年間で約1・5倍になったという。会場でも関心は高く、「終活のポイント」に関する公証人の講演は、座席を急きょ増やしたほど

 配られたエンディングノートに「わたしの人生」欄がある。思い出や苦労したこと、エピソードを記そうとあったが、思い浮かぶのは巡り会った人たちの顔ばかりだ

 誰しも「けりをつける」頃合いを迎える。世話になった一人一人に謝辞を送ることから、終活は始まるのかもしれない。