声援を送るサポーター=鳴門ポカリスエットスタジアム

4月29日のジェフ千葉戦で、徳島ヴォルティスのサポーターやクラブ関係者だけでなく、徳島県民にも衝撃が走る出来事が起きた。徳島側の観客席にいたサポーター男性が、試合後にアルコールとみられる液体をボールボーイにかけた。これがきっかけとなり、徳島ヴォルティスには全国各地から厳しい視線が注がれることとなった。5月3日に鳴門ポカリスエットスタジアムで行われたアビスパ福岡戦を応援しに来た徳島サポーターに、今回の事件について話を聞いた。

◆来場者は千葉戦後の行為に怒りや落胆

「絶対にやってはいけないことだ」と憤るのはサポーター歴約10年という会社員の男性。試合に熱くなりすぎたのかもしれないが、この男性は「許されるものではない」と語気を強めた。よく観戦に来る女性は「今シーズン、チームはいいところ(順位)につけているのに」と、チームの勢いに水を差す行動を嘆いた。

Jリーグのチームは、地域の名前を冠しているだけに、一人のサポーターの行為が「徳島」のイメージも左右する。「『徳島』が全国ニュースに出ることなどなかなかない。でも、名前が出たと思ったらこんな話では」と落胆する。孫を連れていた男性サポーターは「本当に残念。徳島の印象も悪くなってしまう」。

◆以前から問題視されていた一部サポーターの行動

今回の問題とは直接関係はないものの、応援の中心となるゴール裏席での一部サポーターの観戦マナーの悪さを問題視する声は、以前から出ていた。汚い野次も飛んでいたといい、3日の来場者からも「酒を飲んで好き勝手している」「応援というより、目立ちたいだけではないのか」などの厳しい声が聞かれた。
雰囲気の悪さから、ゴール裏席を敬遠する人もいるという。こういう状況のためか、J1を経験しているにもかかわらず、応援に対し「他チームほど一体感がなく、見劣りしてしまう」との指摘もあった。長年ゴール裏で観戦している男性サポーターは、千葉戦や他の問題行動について「クラブあってこそのサポーター。応援しているはずのクラブに迷惑をかけてはいけない」と訴える。

◆クラブとサポーターは応援環境を協議へ

応援環境について話し合いが進められる

3日の試合前、クラブは、応援を主導している団体の関係者を集め、今後の応援体制について話し合いの場を持った。クラブはこれまでも、誰もが安心して観戦できたり、汚い野次や暴言が飛ばなかったりする「あたたかい雰囲気のあるスタジアム」を掲げながら、具体的な動きがなかったことを反省。千葉戦での問題が起こった後、サポーターの行動の改善を求める意見がクラブに多く寄せられたことも、話し合いの場を待つ契機になったという。まだ最終結論には至っていないが、クラブは、サポーター団体とコミュニケーションを図り、良い環境づくりを目指していく。

◆スタジアムを包んだ一体となった応援
3日の試合で、サポーターはクラブの要請を受け、鳴り物や拡声器を使用した応援を自粛した。それでも、いつも以上に大きな拍手と生の声がスタジアムにこだました。「苦しい時こそ支えよう」というサポーターの思いが一体感となり、選手の背中を押した。ゴール裏で応援していた女性は「すごくいい雰囲気だった」と振り返る。
今回、近寄りがたい雰囲気だった人にも声を掛けたそうで、サポーター同士で少しでも声を掛け合っていれば「問題ある行動も防げたのかもしれない」と話した。クラブとサポーターだけでなく、サポーター間でのコミュニケーションも応援する環境の改善につながるのかもしれない。

◆地域を元気にする場所

毎回多くの人を集めるスタジアム

今回の騒動で、多くのサポーターがヴォルティスの行く末を心配した。20年近く試合を見てきた男性は「スタジアムは徳島の元気の源になれる」と表現。人口が少なく、交通も決して便利ではない場所で、定期的に4000人、5000人が集まる。徳島県内で定期的にこれほどの集客ができるイベントはほとんどない。

「スタジアムでの応援は老若男女が楽しめる」という年配サポーター。元気を与えてくれる場所だけに、今回の騒ぎで、「人が離れ、(来場者の規模が)縮小してしまわないか心配」「楽しめる場所がなくなるのでは」と不安を口にした。しかし、この日の福岡戦には5832人が集まり、よい雰囲気で試合は行われた。これを継続できるかが、観客動員を発展させていくための鍵となる。

◆選手はピッチ上で奮闘。次はクラブとサポーター

逆転ゴールを決めた内田に駆け寄るヴォルティス選手ら

クラブの信頼を揺るがすことになった騒動について来場者からは「クラブ、ファン、選手がすぐに形で示さなければいけない」との声が聞かれた。選手は「ピッチの上で結果を示していくしかない」との言葉通り、苦しい状況にありながらホームの観衆の前で勝利という1つの形を示した。「ピンチをチャンスとして良い方向に進んでほしい」というエールもあった。次は、応援環境について話し合いを始めたクラブとサポーターが形を示す番になる。(城福章裕)

(2017年5月4日)