巧みなドリブルで相手をかわし、ゴール前に切れ込む。徳島ヴォルティスユースで背番号10を背負う攻撃の柱・藤原志龍(しりゅう)選手(16)=生光学園高2年、北島町。日本サッカー協会とJリーグの協働プログラム事業であるU-17(17歳以下)Jリーグ選抜に選ばれ、4月に海外キャンプを経験した。レベルの高い環境に身を置き、多くの刺激を受けた。プロ選手として、ピッチに立つ日を夢に、日々トレーニングに励んでいる。

ドリブルが持ち味の藤原選手

◆強豪そろう大会でゴール
オランダで行われたキャンプで、Jリーグ選抜はカップ戦に参加。地元の名門・アヤックスをはじめ、ユベントス(イタリア)、バイエルン(ドイツ)などヨーロッパを代表するビッグクラブが名を連ねる中、選抜チームは、3位に入った。
藤原選手は3位決定戦までの5試合(30分ハーフ)すべてでピッチに立ち、うち2試合にフル出場。所属するヴォルティスユースではMF登録でトップ下などでプレーしているが、得点力も高く今大会ではFWで起用され、予選リーグ突破を懸けた3戦目のベンフィカ(ポルトガル)戦で1ゴールを決めた。0-1から反撃の口火となる同点弾で、チームの準決勝進出に貢献。「負けていたら(トーナメントに)上がれなかった試合。流れを変えられたのはよかった」と振り返る。試合では積極的にシュートを放ち、ポストを直撃するなど惜しい場面もあった。しかし、1得点にとどまったため「ほかのところでも取れていた」と悔しさものぞかせ、フィニッシュの精度アップを誓う。

プリンスリーグでも得点を重ね、攻撃をけん引する藤原選手=4月29日、徳島スポーツビレッジ

◆体格差には苦戦も足元の技術には手応え
同年代とはいえ、対戦チームには、身長が2メートル近い選手もいた。藤原選手は身長170センチ、63キロ。体の大きさや強さ、フィジカル面での違いを実感した。日本の選手なら届かない場所まで足が伸びてくる。「いつもと全然違った。距離感をつかむのにも苦労した」。それでも、慣れてくると、持ち前のドリブルで積極的に仕掛け「足元の技術やスピードは通用した」と自信も深めた。

海外キャンプでは、ヨーロッパのサッカー環境や選抜チームの仲間の意識の高さも刺激になった。試合中、ドリブルで何人か交わしたり、足技の「エラシコ」を決めたりすると、歓声が起こった。「トリッキーなプレーが好きそうで喜んでもらえた。サッカーに対しての情熱が日本と違い、プレーにも力が入りそう」。目の肥えたファンを沸かせ、サッカー文化も肌で感じた。

もう一つ刺激となったのは、チームメートの姿。全国から集まったJリーグチームの育成組織を代表する選手たちは、食事にも注意したり、試合後の体のケアに取り組んだりと、ピッチ外での行動から違い、意識の高さも目の当たりにした。

トップチームで練習する藤原選手(左)=5月11日、徳島スポーツビレッジ

◆足元の技術は地道な練習から
サッカーを始めたのは小学1年の頃。友人に誘われたのがきっかけだった。父親の影響で野球をやろうかと考えていたとき、声を掛けられ、地元の北島FCでプレーを始めた。学年が上がり、試合に出るようになると、楽しさが増し、のめり込んだ。小学校卒業後は「徳島で一番成長させてくれる場所」として、ヴォルティスジュニアユース、ユースへと進んだ。力を伸ばし、年代別の日本代表へも選出されるようになった。

ドリブルは、自宅近くのグラウンドでの地道な練習で磨いた。長ければ1時間近くドリブルで回る。現在はチームの練習や試合が週6日にあるため、コンディションを見極めながら、続けている。サイドから中央に切れ込んだり、2人、3人に囲まれながらも突破したりとドリブルは相手守備陣にとって脅威。ユースを指揮する羽地登志晃監督も藤原選手のプレーに「わくわくしながら見ている。感じたことをプレーで表現してほしい」と話す。課題として、ゴール前で相手をかわした後のパスやフィニッシュを挙げ、さらなる成長に期待を込める。

「1日も早くプロのピッチに立ちたい」と語る藤原選手(中)=徳島スポーツビレッジ

◆まずはプロのピッチに 将来は「海外でプレーしてみたい」
今季は、Jリーグの公式戦に出場できる2種登録選手となり、トップチームにも登録された。4月28日には背番号33で登録されたことが発表され、目標の試合出場へ近づいた。トップチームでの練習回数も増え「良いポジションでボールを受けないとつぶされてしまう」と課題も口にする。判断のスピード、守備の激しさ、自分の力を発揮できるポジション取りの重要性など多くを学んでいる最中だ。一方で、「積極的にシュートを放ったり、ドリブルして得点に絡んだりしていきたい」と自分の強みも出すことを忘れない。

「1日も早くトップの試合に出たい」と語る。トップチームで活躍し、海外でのプレー、A代表入りも夢見る。目標とする選手は、ブラジル代表で、スペインの名門・バルセロナでプレーするネイマール選手。動画を見て練習で技を試すこともあるという。

周りの選手をあまり意識することはなく「自分が頑張るだけ」と表情を引き締める。大きな夢へ向かって一歩一歩進んでいく。

          (2017年5月15日)