国家非常事態宣言という言葉にはまがまがしい響きがある。硝煙や血のにおいも漂ってきそうで、それが発動されるとあれば、何事ぞ、と身構える。そういうものだと思っていたら、米国民は割と頻繁に耳にするようなのである

 非常事態法が制定されたのが1976年。この40年で、米中枢同時テロなど59件に適用され、現在も32件が有効だ。トランプ大統領自身も、発令するのは今回が初めてではない

 何が非常事態か明文化されていないものの、大統領が議会の承認を経ずに権力を振るうことのできる布告である。正当な理由が必要だ。「国境の壁建設」は、到底それには当たらず、権力の乱用だ、と激しい批判が起きている

 野党が多数を占める下院を乗り切るのは難しい。いの一番の公約だった「国境の壁」は遅々として進まない。このままでは支持者にそっぽを向かれ、来年の大統領選が危うい

 「禁じ手」を繰り出したのは、つまりは支持者にいい顔をしたいがため。米国第一主義の「米国」が何を指すかは明らかだ

 そんなトランプ氏を、ノーベル平和賞に推薦した首相もいるようだ。朝鮮半島の緊張緩和に果たした役割は大きいが、どうもピンと来ない。事実とすれば、推薦したよ、と連絡する辺りも、こびを売っているようにしか見えない。外交とはかくも涙ぐましいものか。