長い歳月を経て、北朝鮮による日本人拉致問題の重要な情報がまた判明した。

 政府が被害者に認定している神戸市の元ラーメン店員田中実さん=失踪当時(28)=が結婚し、平壌で妻子と共に生活している。政府が「拉致の可能性を排除できない」とする金田龍光さん=同(26)=にも妻子がいる。これらが、北朝鮮から日本側に伝えられたという。

 安倍晋三首相は、金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を模索している。あらゆる外交ルートを通じて膠着した状態を打開し、拉致問題の解決に向けて、道筋をつけなければならない。

 田中さんと金田さんは、店主が北朝鮮工作員とされる同じラーメン店の店員だった。

 田中さんは1978年、成田空港からウィーンに向けて出国した後、行方不明になった。金田さんは79年に、田中さんに会うため「東京に打ち合わせに行く」と周囲に語り消息を絶っている。

 北朝鮮からは、2人とも帰国の意思は「ない」と説明されたが、日本側は面会していない。大事なのは、北朝鮮が伝えた情報の真偽を確認することである。

 2014年の日本との接触で2人が「入国していた」と初めて伝えてきたことが分かったのは、昨年3月だった。

 北朝鮮は田中さんについて14年までは「入国を確認できない」とし、金田さんについては入国の有無を明らかにしていなかった。

 金田さんは出国記録などが確認されず、拉致被害者としては認定されていない。

 2人の生存情報が伝えられた後の14年5月、日朝の「ストックホルム合意」で、北朝鮮側は、拉致被害者の再調査をはじめとする日本人の全面調査を行うとし、特別調査委員会を設置した。日本の期待が高まったのは当然である。

 ところが、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射を重く見た日本が独自制裁を強化した16年2月、北朝鮮は調査委員会の解体を発表し、日朝交渉は停滞局面に入っている。

 しかし、昨年6月、トランプ大統領と金氏の米朝首脳会談が実現し、北朝鮮を巡る状況は劇的に変わりつつある。

 この会談で、トランプ氏から日本人拉致問題を提起された際、金氏は従来の立場である「解決済み」とは言及しなかったとされる。

 今月27、28日には2度目の米朝首脳会談が開かれる。安倍首相はトランプ氏に、拉致問題解決に向けて協力を求める考えだ。北朝鮮の姿勢を変えさせるためには、米国の後押しが不可欠である。

 拉致被害者の帰国を待ち望んでいる家族らは高齢化しており、精神的な苦しみは計り知れない。家族会などが、被害者全員の即時一括帰国が実現すれば国交正常化に反対しないとする、金氏宛てのメッセージを公表したのも切実な思いの表れだろう。

 安倍政権は何としても成果を挙げなければならない。